ぶどう糖や果糖、麦芽糖といった糖質とたんぱく質などの非酵素的なメイラード反応の結果、生じる最終産物を総じて、終末糖化産物(Advanced glycation end products)と呼びます。
食品に含まれるアクリルアミドは、AGEのひとつです。アクリルアミドは、アミノ酸のアスパラギンからメイラード反応によって生じます。アクリルアミドは、WHO(世界保健機関)などによって、発がん性があると考えられる物質のひとつにあげられています。
AEGは体にさまざまな悪影響を及ぼします。AGEは、体内のたんぱく質に作用し、その機能を低下させる働きがあります。これが積み重なることで、体が老化します。AGEは加齢とともに増加し、老化を進行させ、寿命を縮める原因のひとつとなっています。
AGEの作用で、老化との関係が深いのが、たんぱく質の架橋形成です。AGEの影響を受けやすいたんぱく質として、コラーゲンがあります。AGEが手あたり次第にコラーゲンを結びつけると、必要な弾力と張力が得られなくなります。また、古くなったコラーゲンが酵素で分解できないばかりか、機能の低下したコラーゲンがいつまでも居座り続けることになります。コラーゲンは、皮膚だけでなく、血管も構成しています。血管の老化現象として、特に恐れられるのは、動脈硬化です。動脈硬化の多くは、厚くなった動脈の内部に、アテロームと呼ばれる固まりが生じます。AGEは、アテロームによる動脈硬化を促進させます。骨はコラーゲンを主体にカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が結びついて形成されています。骨を形成する際にカルシウムなどのミネラル分の沈着がAGEによって阻害され、骨の合成が低下します。関節内の軟骨などのコラーゲンにも、AGEが蓄積して、強度や柔軟性を低下させることがあります。アルツハイマー型認知症の詳しいメカニズムは、未だにわからないことが多いですが、近年AGEが影響を及ぼしているという研究結果が報告されています。日本人の死因の第1位はがん、第2位は心臓病、第3位は脳卒中です。その背後には、AGEが存在しています。
今からできるAGE対策としては、糖の代謝に関与しAGEを生成する糖化作用を防ぐとされるα-リポ酸などを含む緑黄色野菜を摂ること、抗AGE機能を持つビタミンB群を豊富に含むきのこ類をと摂ること、AGEの生成を抑えるカルノシンを含む鶏肉、かつお、まぐろ、うなぎ、同様にAGEの生成を抑制するお茶のカテキンやブルーベリーのアントシアニンといったポリフェノールを摂ることです。
食事の組み合わせも工夫し、揚げ物などAGEの高いものを食べるときは、AGEの増加や吸収を抑えてくれる働きがあるクエン酸と一緒に摂ります。黒酢や梅干し、柑橘類にクエン酸は、多く含まれています。
コゲが生じやすい高温調理になるほどAGEが増加します。焼く、炒める、揚げるといった調理方法よりも、茹でる、蒸す、あるいは生のままといった調理方法の方がAGEは少なくなります。
AGE含有量は、食品によって大きく異なります。そのため、AGE含有量の多い加工された肉類、揚げ物などをできるだけ食べないことです。
AGE(終末糖化産物)とメイラード反応
ぶどう糖や果糖、麦芽糖といった糖質とたんぱく質などの非酵素的なメイラード反応の結果、生じる最終産物を総じて、終末糖化産物(Advanced glycation end products)と呼びます。
メイラード反応は、可逆的な初期反応と不可逆的な中期および後期反応に分けられます。初期反応は、ぶどう糖などの糖質とたんぱく質が反応して、アマドリ化合物という物質が生成します。続いて、アマドリ化合物からα-ジカルボニル化合物という物質が生じる中期反応、α-ジカルボニル化合物からAGEが生成され、同時に褐色物質であるメラノイジンの生成も起こる過程が後期反応になります。
身近なところでは、パンや焼きおにぎりなどの調理された食品の焼き色、しょう油やみそなどの茶褐色がメイラード反応による褐変です。これら以外にもお好み焼きやたこ焼き、パンケーキなど糖質とたんぱく質を含む食材を加熱すると褐色になりますが、これらはすべてメイラード反応によるもので、AGEが生成します。タマネギを炒めるとキツネ色になるのも同様にメイラード反応であり、これもAGEが生成します。
メイラード反応は、糖質とたんぱく質を一緒に加熱することで起こることから、カラメルのように糖質だけを加熱すれば、AGEは生成しません。
AGEは、糖質とたんぱく質から最終的に生じる物質の総称で、カルボキシメチルリジン、ペントシジンなど100種類以上あると考えられています。AGEが生じる一連の反応は、不可逆反応のため、AGEが糖質とたんぱく質に戻ることはありません。
アクリルアミドは食品に含まれるAGE
食品に含まれるアクリルアミドは、AGEのひとつです。アクリルアミドは、アミノ酸のアスパラギンからメイラード反応によって生じます。アクリルアミドは、WHO(世界保健機関)などによって、発がん性があると考えられる物質のひとつにあげられています。
1998年にスウェーデンにて、食品中のアクリルアミドに関する研究を開始し、糖質を多く含むイモ類を焼いたり、揚げたりしたポテトチップスやフライドポテトに大量のアクリルアミドが生成されることを突き止めました。さらにこれら以外にも、糖質を多く含む食材を高温調理した食品にアクリルアミドが含まれることが明らかとなりました。
AEGが体に及ぼす影響
・たんぱく質への影響
AGEは、体内のたんぱく質に作用し、その機能を低下させる働きがあります。体を構成しているたんぱく質は、合成と分解を繰り返す新陳代謝によって、常に入れ替わっています。たんぱく質は、たくさんのアミノ酸で構成され、遺伝子の本体であるDNAは、たんぱく質をつくるアミノ酸の種類とその順序を示す情報を有しています。遺伝子の情報からたんぱく質を合成することを翻訳(トランスレーション)といいます。翻訳されたたんぱく質は、必要に応じて、糖質やリン酸などが付加されるといった修飾(モディフィケーション)がなされます。AGEは、たんぱく質に好ましくない修飾を行います。一般的な修飾は、たんぱく質の機能を高めるために必要となりますが、AGEによる好ましくない修飾はたんぱく質の本来の働きを阻害します。これが積み重なることで、体が老化します。
AGEは加齢とともに増加し、老化を進行させ、寿命を縮める原因のひとつとなっています。
・コラーゲンへの影響
AGEによる修飾で、老化との関係が深いのが、たんぱく質の架橋形成です。体内のAGEは、たんぱく質同士に橋を架けるように存在しています。AGEの影響を受けやすいたんぱく質として、コラーゲンがあります。
コラーゲンは、体内にある全たんぱく質の25~30%を占め、肌の弾力性や柔軟性といった機能を保持する役割を担っています。コラーゲンを構成する3本のたんぱく質は、らせん状となっており、一部のアミノ酸にこの3本鎖のらせん構造を安定化させる働きがあります。この構造は、コラーゲンが弾力と張力を保つ上で、重要な役割があります。ところが、AGEが手あたり次第にコラーゲンを結びつけると、必要な弾力と張力が得られなくなります。
古くなったコラーゲンは、酵素のコラゲナーゼにより分解されて、新しいコラーゲンへと置き換えられます。しかし、AGEによって手あたり次第にコラーゲンが結びつけられると、コラゲナーゼで分解できないばかりか、古く機能の低下したコラーゲンがいつまでも居座り続けることになります。
白血球の一種であるマクロファージは、AGEを貪食することで、取り除くことができますが、AGEと一緒にコラーゲンの一部も取り除いてしまいます。するとマクロファージは、損なわれたコラーゲンを修復するために、増殖を促す因子を放出します。その結果、コラーゲンが過剰につくられることで、逆にその機能を損なわれることになります。たんぱく質は、種類によって新陳代謝のスピードが大きく異なり、コラーゲンは15年以上も体内に留まり続け、その間にAGEが蓄積することになります。
・血管への影響
コラーゲンは、皮膚だけでなく、血管も構成しています。血管は体を健康に保つ上で、もっとも大切な役割を担っています。血管が老いることで、体も老いますが、その背後には、AGEの存在があります。
体は60兆個を超える細胞で形成されており、血管が細胞のひとつひとつに必要な酸素と栄養素を送り届けています。そのため、血管が詰まって血液の流れが止まると、その血管が必要な酸素と栄養素を届けていた細胞は死ぬことになります。血管の老化現象として、特に恐れられるのは、動脈硬化です。動脈硬化の多くは、厚くなった動脈の内部に、アテロームと呼ばれる固まりが生じます。AGEは、アテロームによる動脈硬化を促進させます。動脈硬化の初期は、血液中に増えすぎた悪玉コレステロールが血管に蓄積します。血管に蓄積した悪玉コレステロールは、AGEにより修飾を受けます。修飾を受けた悪玉コレステロールは、マクロファージに貪食され、泡沫細胞と呼ばれる脂肪蓄積マクロファージとなります。この泡沫細胞がアテロームの生成や動脈の内側を厚くします。
AGEは、血管に対する直接的な悪影響もあります。血管の内側にある内皮細胞には、AGEの受容体があります。この受容体にAGEが結合すると、動脈硬化を進行させます。
・骨への影響
骨は加齢による影響を受けやすい部位です。骨はコラーゲンを主体にカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が結びついて形成されています。
骨も他の組織と同じように新陳代謝を行い、分解と合成を繰り返しています。骨の乾燥重量のおよそ半分はコラーゲンで、このコラーゲンにAGEが蓄積すると骨の強度が低下する恐れがあります。AGEは、骨の新陳代謝にも悪影響を及ぼします。骨を形成する際にカルシウムなどのミネラル分の沈着がAGEによって阻害され、骨の合成が低下します。こうして骨の合成が低下することで、骨からカルシウムなどが溶け出して骨の強度が下がります。
関節内の軟骨などのコラーゲンにも、AGEが蓄積して、強度や柔軟性を低下させることがあります。軟骨のコラーゲンは、生まれてから一度も入れ替わらないので、少しずつAGEがたまり続け、関節症の原因となります。
・脳への影響
アルツハイマー型認知症は、脳の老化などによって引き起こされます。脳は1000億個ともいわれる神経細胞が集まっています。アルツハイマー型認知症には、正常な脳にも存在しているたんぱく質が、アミロイドという線維をつくって神経細胞の外側に沈着するという特徴があります。
アルツハイマー型認知症の詳しいメカニズムは、未だにわからないことが多いですが、近年AGEが影響を及ぼしているという研究結果が報告されています。
・生活習慣病への影響
日本人の死因の第1位はがんです。日本人の2人に1人は一生のうちに一度はがんになり、3人に1人はがんで亡くなります。がんにもまたAGEが関わっています。第2位は心筋梗塞などの心臓病、第3位は脳梗塞などの脳卒中で、その背後には、動脈硬化を進めるAGEが存在します。
がんのはじまりは、遺伝子の異変です。体内では新陳代謝により、毎日およそ1兆個の細胞が死に、1兆個の細胞が新たに生まれています。新たに生まれる細胞は、遺伝子の本体であるDNAに従ってつくられますが、その際になんらかのトラブルで正確に情報が複製されないと遺伝子の変異が起こり、がん細胞が生じます。実際のところ、毎日5,000個以上のがん細胞が体内に生じています。
がん細胞の多くは、免疫機能によって除去されますが、加齢とともに免疫機能は低下します。中には免疫機能をすり抜ける場合がり、がん細胞が増殖することになります。
遺伝情報を伝えるDNAにAGEが蓄積すると、DNAの修復や複製などに悪影響を及ぼし、がん細胞の発生を招くことになります。さらにAGEは、がんの転移を起こりやすくすることが、昨今の研究で明らかとなりました。
今からできるAGE対策
・積極的に摂りたい食材
緑黄色野菜に含まれるα-リポ酸は、細胞での糖の代謝に関与し、AGEを生成する糖化作用防ぐ効果が報告されています。また、ビタミンCの約400倍ともいわれる強力な抗酸化作用を有しています。ホウレンソウ、ブロッコリー、トマトなどに含まれています。
きのこ類は、ビタミンB群を豊富に含んでいます。特にビタミンB1とビタミンB6は、抗AGEビタミンの代表です。ビタミンB群は、お互いが助け合って作用します。
鶏肉、かつお、まぐろ、うなぎなどの筋肉や肝臓中に存在するカルノシンは、抗酸化及び抗疲労物質として注目される成分のひとつです。AGEを生成する糖化作用を促進する活性酸素を取り除き、AGE生成を抑えることが期待されます。
お茶のカテキンやブルーベリーのアントシアニンといったポリフェノールは、AGEの生成を抑える効果があると言われています。
・食事の組み合わせ
揚げ物などAGEの高いものを食べるときは、AGEの増加や吸収を抑えてくれる働きがある成分と一緒に摂ります。AGEの吸収を緩やかにすると言われているのがクエン酸です。クエン酸を含むレモンなどをしぼってかけます。黒酢や梅干し、レモン以外の柑橘類にもクエン酸は、多く含まれています。
・調理方法の工夫
AGEは調理方法によっても量が変化します。コゲが生じやすい高温調理になるほどAGEが増加します。焼く、炒める、揚げるといった調理方法よりも、茹でる、蒸す、あるいは生のままといった調理方法の方がAGEは少なくなります。
・AGE含有量の多い食品を食べる機会を減らす
AGE含有量は、食品によって大きく異なります。そのため、効果的な対策としては、AGE含有量の多い食品をできるだけ食べないことです。
AGE含有量が多い食品としては、フランクフルト、ローストビーフ、バター、ベーコン、ポテトチップス、チキンナゲット、パンケーキなどです。加工された肉類、揚げ物などに多い傾向があります。一方で、魚や野菜、果物は少ない傾向にあります。
まとめ
ぶどう糖や果糖、麦芽糖といった糖質とたんぱく質などの非酵素的なメイラード反応の結果、生じる最終産物を総じて、終末糖化産物(Advanced glycation end products)と呼びます。
食品に含まれるアクリルアミドは、AGEのひとつです。アクリルアミドは、アミノ酸のアスパラギンからメイラード反応によって生じます。アクリルアミドは、WHO(世界保健機関)などによって、発がん性があると考えられる物質のひとつにあげられています。
AEGは体にさまざまな悪影響を及ぼします。AGEは、体内のたんぱく質に作用し、その機能を低下させる働きがあります。これが積み重なることで、体が老化します。AGEは加齢とともに増加し、老化を進行させ、寿命を縮める原因のひとつとなっています。
AGEの作用で、老化との関係が深いのが、たんぱく質の架橋形成です。AGEの影響を受けやすいたんぱく質として、コラーゲンがあります。AGEが手あたり次第にコラーゲンを結びつけると、必要な弾力と張力が得られなくなります。また、古くなったコラーゲンが酵素で分解できないばかりか、機能の低下したコラーゲンがいつまでも居座り続けることになります。コラーゲンは、皮膚だけでなく、血管も構成しています。血管の老化現象として、特に恐れられるのは、動脈硬化です。動脈硬化の多くは、厚くなった動脈の内部に、アテロームと呼ばれる固まりが生じます。AGEは、アテロームによる動脈硬化を促進させます。骨はコラーゲンを主体にカルシウムやマグネシウムなどのミネラル分が結びついて形成されています。骨を形成する際にカルシウムなどのミネラル分の沈着がAGEによって阻害され、骨の合成が低下します。関節内の軟骨などのコラーゲンにも、AGEが蓄積して、強度や柔軟性を低下させることがあります。アルツハイマー型認知症の詳しいメカニズムは、未だにわからないことが多いですが、近年AGEが影響を及ぼしているという研究結果が報告されています。日本人の死因の第1位はがん、第2位は心臓病、第3位は脳卒中です。その背後には、AGEが存在しています。
今からできるAGE対策としては、糖の代謝に関与しAGEを生成する糖化作用を防ぐとされるα-リポ酸などを含む緑黄色野菜を摂ること、抗AGE機能を持つビタミンB群を豊富に含むきのこ類をと摂ること、AGEの生成を抑えるカルノシンを含む鶏肉、かつお、まぐろ、うなぎ、同様にAGEの生成を抑制するお茶のカテキンやブルーベリーのアントシアニンといったポリフェノールを摂ることです。
食事の組み合わせも工夫し、揚げ物などAGEの高いものを食べるときは、AGEの増加や吸収を抑えてくれる働きがあるクエン酸と一緒に摂ります。黒酢や梅干し、柑橘類にクエン酸は、多く含まれています。
コゲが生じやすい高温調理になるほどAGEが増加します。焼く、炒める、揚げるといった調理方法よりも、茹でる、蒸す、あるいは生のままといった調理方法の方がAGEは少なくなります。
AGE含有量は、食品によって大きく異なります。そのため、AGE含有量の多い加工された肉類、揚げ物などをできるだけ食べないことです。