意外なところにコストがかかる卵
昭和20代は1羽の鶏が1年間に産む卵の数は、130~200が限界でした。ところが現在では、年間270~280個と大幅に増加しています。また、同じ大きさの鶏に育つまでの日数は、昭和20年代に比べて半分にまで減っています。
つまり、今の鶏は若いころからたくさんの卵を産む人にとって都合のいい鶏で、白色レグホンと呼ばれます。ただし、それだけたくさん卵を産ませようとすると電気代がかかります。窓がほぼない鶏舎で、長時間電灯をつけたままにしているからです。白色レグホンは、もともと1日1個のペースで卵を産むように品種改良されたものです。しかし、いくら品種改良されても、きっちり1日1個のペースは守れません。実際は24時間と数十分、数時間に1個の割合なので、どうしても卵を産む時間が少しずつずれていきます。朝の6時に卵を産めば、翌日は7時前後になるのです。こうして徐々に遅れていき、午後2時以降は卵を産まないので、その日の分は翌日に持ち越されることになります。しかし、鶏卵業者としては、翌日まで待つのがじれったく、そこで電灯を照らして、日照時間を長くしているのです。そうするとそれだけで卵を産む割合が高くなるからです。実際に光を当てられることによって、朝夕の感覚がなくなり、1日に2個産んでしまう鶏もいます。
こうして卵を産み続けている鶏ですが、少しでも産卵能力が落ちれば、すぐにでも仲間たちのエサにされてしまう運命にあります。現在のところ、養鶏所の鶏は、卵を産むマシーンと化しています。
ヨード卵
スーパーの卵売り場には、普通の白い卵のほかに、少し赤みがかったヨード卵が並んでいます。ヨード卵は高コレステロール血症低下作用があり、そもそもヨード卵と聞くだけで、微量ミネラルのヨウ素を含有する体によさそうなイメージがあります。
しかし、手を伸ばして買い物かごに入れようとして、思わず手を引っ込めた経験のある人もいるでしょう。値段は普通の卵の何倍もします。それだけ値段が張るのは、ヨード卵を産ませるために手間がかかっているからです。
ヨード卵は、コーチンやワーレン、コメットなど羽が茶色か黒色の鶏が産みます。これらの有色鶏は、そもそも値段が高く、仕入れにコストがかかります。またエサも普通の配合飼料ではなく、特別なものが与えられています。トウモロコシや魚粉、アルファルファを混ぜたものに、海藻などヨードを高含有するものを加えた豪華版です。このヨードは鶏の体内でアミノ酸と結び付き有機ヨードとなり、その鶏が産む卵に有機ヨードが含まれるというわけです。
このようにヨード卵は、さまざまな点でコストがかかっています。値段が高くなるのも、やむをえません。
温泉卵
大阪のデパ地下に行くと、パートの方の元気のいい売り声が聞こえてきます。麺類のコーナーからは、「焼きそばどうですか。美味しいですよ。焼かんでもエエ、焼きそば。」という売り声も聞こえてきます。その側で、「水を使わない温泉卵」も販売されています。水を使わないで、いったいどうやって半熟にするのでしょうか。
温泉卵は、白身が半凝固で黄身が半熟のゆで卵です。白身と黄身の固まる温度の微妙な差を利用してつくることができます。白身が固まり始めるのは58℃ですが、80℃近くまで加温しなければ完全には固まりません。一方、黄身は65℃で固まりはじめ、この温度を保てば徐々に半熟が進みます。つまり、温泉の水温が65℃程度であれば、白身が半凝固で黄身が半熟の温泉卵ができあがります。
さて、水を使わない温泉卵は、温泉の代わりに遠赤外線調理器を用います。ゆっくり流れるベルトの上に卵を並べ、調理器を通すと、温泉卵になって出てきます。時間にして30秒程度です。卵の中まで温める遠赤外線を使用することで、水を使わずに温泉卵ができます。
まとめ
たくさんの卵を産む鶏は、白色レグホンと呼ばれます。たくさん卵を産ませようとすると電気代がかかります。窓がほぼない鶏舎で、長時間電灯をつけたままにしているからです。白色レグホンは、もともと1日1個のペースで卵を産むように品種改良されたものです。
ヨード卵は、コーチンやワーレン、コメットなど羽が茶色か黒色の鶏が産みます。エサは普通の配合飼料ではなく、トウモロコシや魚粉、アルファルファを混ぜたものに、海藻などヨードを高含有するものを加えた豪華版です。このヨードは鶏の体内でアミノ酸と結び付き有機ヨードとなり、その鶏が産む卵に有機ヨードが含まれることになります。
温泉の水温が65℃程度であれば、白身が半凝固で黄身が半熟の温泉卵ができあがります。水を使わない温泉卵は、遠赤外線調理器を用います。ゆっくり流れるベルトの上に卵を並べ、調理器を通すと、温泉卵になって出てきます。