食品の製品開発を行う際に設備がなく、どうしようかと途方に暮れることもあるかもしれません。
しかし、各都道府県には、このような悩みや抱えている課題をサポートしてくれる研究機関があります。装置の使い方が分からなくても、技術に精通した担当者が丁寧に指導してくれます。
私は食品メーカーの製品開発に20年程従事し、自社の設備では到底できない製品の開発をこのような研究機関のサポートにより、実現しました。
設備のない中で食品の製品開発を行うには
「食品分野で新たに新製品を開発してみたい。」、「アイデアはあるけれどどのようにして、新たな製品を開発すればいいのかわからない。」、「新製品や既存製品の成分を分析してみたい。」といったような悩みは、ありませんか。
各都道府県には、このような悩みや抱えている課題をサポートしてくれる研究機関があります。事前に申し込めば、格安で加工する装置や分析機器を借りることができ、製品開発の一助となることは、間違いありません。
装置の使い方が分からなくても、技術に精通した担当者が丁寧に指導や加工におけるアドバイスをしてくれます。とても頼もしい機関です。
そのため、社内で有している設備にこだわることなく、幅広い製品開発が実現するかもしれません。
各都道府県にある食品の研究機関の一例
東京都立食品技術センター
東京都には、公益財団法人東京都農林水産振興財団が所管する東京都立食品技術センターがあります。開放試験室には各種機器を設置しており、気軽に相談の上、事前予約を行い、格安で機器を利用することができます。
設置機器は、以下の通りです。
・赤外線水分計
赤外線水分計は、熱源と温度センサー、荷重計、演算機能の4つの要素で構成されています。一般的な食品の水分測定法となる常圧加熱乾燥法と同じ原理となる赤外線水分計は、試料の水分を効率良く蒸発させる波長域の赤外線を放射するため、乾燥時間が大幅に短縮されます。固体や液体、ペースト状の試料の水分を測定することができます。使用料金は、1時間で290円です。
・分光光度計
物質特有の色調や濃さを標準物質と比較する比色法は、古くから行われてきましたが、肉眼によるため誤差が大きく、測定範囲も限られるため。分光光度計が、物質の濃度測定に広く用いられています。分光光度計は、光源、分光器、吸収部、検知器などで構成されます。使用料金は、1時間で320円です。
・pHメーター
pHメーターは溶液中のpHを測るための装置で、pHとは溶液中の酸性・アルカリ(塩基)性の度合いを数値化したものであり、0~7までを酸性、7~8を中性、8~14をアルカリ性とします。
pHメーターにはガラス電極と比較電極が存在し、ガラス電極は電極をガラス薄膜で覆ったもので、中はpH7.0に調整した塩化カリウムで満たされています。
pHメーターはその溶液のpHを求める際に使われますが、特定のpHに調整したい場合にも使われます。いずれにしても、その溶液に電極を浸けるだけで、自動的にpHの値を計算してくれます。1時間当たり280円です。
・電子はかり
質量を測定するはかりです。1時間当たり330円です。
・高圧滅菌器
高圧滅菌器は、加圧によって水の沸点を上昇させ、高温の蒸気で加熱滅菌を行う装置です。オートクレーブとも呼ばれます。一般的には、121℃で15〜20分間の加熱滅菌処理を行います。1時間当たり340円です。
・乾熱滅菌器
乾熱滅菌を行う装置で、ほとんどは電気式オーブンです。乾熱滅菌は、ガラス製や磁製、金属製など耐熱性の高い材質のもの、油脂、固形の医薬品など熱に安定なものが適しています。160 ~ 170℃で 120分間あるいは180 ~ 190℃で 30分間の滅菌処理を行います。1時間当たり340円です。
・B型粘度計
B型粘度計とは、流体の粘性率を測定する機器です。アナログタイプのB型粘度計とデジタルタイプのB型粘度計があります。1時間当たり340円です。
・減圧乾燥機
減圧下で乾燥する装置です。気圧が下がると空気中の水蒸気分圧が下がり、水分の沸点が低下し、蒸発速度が加速され、製品を乾燥することができます。乾燥時の圧力は、一般的に0.0296~0.059気圧で、水の沸点は25~30℃となります。減圧乾燥は、バッチ式となります。1時間当たり270円です。
・ビタミンC計
鉄イオンのFe3+からFe2+への還元を利用してビタミンCを定量する装置や製品に浸すだけでビタミンCを検出するビタミンC試験紙などがあります。1時間当たり310円です。
・糖度計
糖度の値として広く採用されているBrix(ブリックス)値は、糖以外に水に溶け込んでいる物質も計測されます。そのため、糖度は正確には、水に溶け込んでいる固形分の濃度となります。1時間当たり200円です。
・色差計
色を数値化する際に用いられるのが色差計です。製品に反射した光を赤と緑と青という3色に分けて、数値化する測定機器です。1時間当たり340円です。
・恒温器
長時間一定温度に保つことができる装置です。主に内部の温度を一定に保つため、周囲環境からの温度変化の影響を防ぐことができる構造になっています。1時間当たり110円です。
・クリーンブース
クリーンブースとは、ホコリや塵、異物などを極力排除し、一定の清浄度を保った空間、及びそれを保つための装置です。主にコンタミネーションを防ぐ目的で使用します。空調や壁などで部屋全体を清浄空間にするクリーンルームとは違い、クリーンブースは支柱とビニールシートで空間を仕切り、その内部でフィルタを使って清浄な空気を循環させ、清浄度を保っています。1時間当たり150円です。
・粉砕機
ある大きさの固体に何らかのエネルギーを加え、小さくする操作のことを粉砕といいます。円板式やローラー式、シリンダー式、衝撃式、ジェット式、高速回転式などの粉砕機があります。1時間当たり160円です。
・クリーンベンチ
クリーンベンチは、ゴミやホコリ、浮遊微生物などの混入を防ぐために、一定の清浄度レベルになるように管理された囲いの付いた作業台です。 フィルタを通した清浄空気が直接流れるようにすることで、清浄度の低い室内で局所的に高い清浄度をつくり出すことができます。1時間当たり220円です。
・水分活性測定器
水分活性とは、食品中の自由水の割合を表す数値で、食品の保存性の指標とされます。食品中にはたんぱく質等と結合した結合水と移動が容易な自由水が含まれ、食品中で微生物が繁殖するには、適切な量の自由水が存在することが不可欠です。食品中の水分活性を低下させる加工を行った場合、微生物の繁殖を抑制できます。微生物の繁殖可能な水分活性としては、一般的な食中毒菌で0.900以上、乾燥や塩分に耐性を持つものでも0.800以上、0.600以下になれば全ての微生物は繁殖が不可能になります。水分活性の測定には、重量平衡法や蒸気圧法が用いられます。1時間当たり330円です。
・レトルト殺菌機
レトルト殺菌機を使用することによって、高温高圧下で殺菌を行うことができます。レトルト殺菌の一般的な条件は、120℃で30~60分です。釜内に蒸気などを導入し、殺菌します。1時間当たり330円です。
・味覚センサー
味覚を数値で表すことができる装置です。原理としては、甘味やうま味、酸味、苦味、塩味といった味物質の濃度がセンサーによって検出され、次にその味物質の濃度がすでに学習させている各濃度に対応する人の官能評価のデータと照らし合わされ、最終的に人の舌で感じられる味の強さとしての数値が導き出されます。
・アミノ酸アナライザー
食品に含まれるたんぱく質を構成するアミノ酸や遊離しているアミノ酸を短時間で分析できる全自動アミノ酸分析器です。
・原子吸光光度計
食品に含まれるミネラルの分析には,原子吸光分光光度計が用いられます。
・電子顕微鏡
通常の光学顕微鏡では、観察したい対象に可視光線をあてて拡大するのに対し、光の代わりに電子線をあてて拡大する顕微鏡です。電子顕微鏡は、食品のミクロな構造を観察する際に用います。
・ジャーファーメンター
微生物の培養に用いる装置です。温度や通気量、撹拌速度、pHなどといった微生物の培養に必要な条件を一定に保つことができます。最大培養量は50~100L程度です。
あいち産業科学総合センター
あいち産業科学総合センターでは下記装置を貸し出しています。
・真空包装機
真空包装機は、真空でパックするための装置です。 真空パックすることにより鮮度、美味しさを保ったまま保存期間を大幅に延ばすなどの効果があります。1時間当たり200円です。
・蒸練機
米粉などと水を混合し、アルファ化するまで蒸し上げる装置です。1時間当たり200円です。
・赤外線オーブン
赤外線の波長が、物質の分子の振動を活発にし、その摩擦により熱が発生することで、加熱する装置です。1時間当たり500円です。
・蒸し器
中華料理でおなじみのせいろのほか、ステンレス製の鍋や土鍋のようなものなど、さまざまな種類があります。1時間当たり500円です。
・スライサー
肉や魚介類などを薄く切断するための機械です。1時間当たり100円です。
・らいかい機
擦り混ぜる機械です。1時間当たり100円です。
・スモークハウス
乾燥や燻煙、排気、ボイル、庫内洗浄など燻製製品製造に必要な各工程に対応できる装置です。1時間当たり200円です。
・製麺機
文字通り製麺作業を行う機械です。手打ちより労力が少なく済み、安定した製麺作業を行うことができます。1時間当たり300円です。
・遠心分離機
遠心分離機は、遠心力を発生させて固体と液体を分離させることができます。また、水と油のように互いに混じりあわない比重の異なる液体と液体を分離させることができます。 1時間当たり200円です。
長野県工業技術総合センター
長野県工業技術総合センターでは下記装置を貸し出しています。
・超臨界流体抽出装置
超臨界流体抽出装置は、超臨界ガスを利用して天然物質より有効成分を抽出することができます。溶媒として2酸化炭素を用います。
・ホモジナイザー
ホモジナイザーは、乳化する機械を指します。牛乳の様な水と油の乳濁液(エマルション)の粒子を小さくして均一に分散させることが可能です。せん断力やキャビテーション、衝突作用を用いて乳化させます。
・シャープレス
遠心分離機です。固液分離や油の除去に用います。
・限外ろ過装置
限外ろ過装置は、1 nm〜0.05 µm程度までの液体中に含まれる物質を分子レベルで分離、濃縮、精製することができます。たんぱく質やウィルスを捕捉し、糖やアミノ酸、塩を透過させます。
・通電加熱装置
食品に通電し、食品自体の発熱により加熱するので、均一な加熱が可能です。
・凍結真空乾燥設備
マイナス数十℃で食品を乾燥させる装置です。
・高圧処理試験機
10,000気圧までかけられる装置で、非加熱での加工や殺菌が可能です。ただし、芽包菌は死滅しません。
・におい識別装置
半導体の電位の変化でにおいを測定します。
・ESR
ESRとは、Electron Spin Resonanceの頭文字をとったもので 電子スピンの磁気共鳴のことを指します。ESR は、電子そのものの振舞を観察して、電子の置かれている 環境を同定することで、様々な現象を解明する方法です。 フリーラジカルなどの測定に使用します。
・DNA解析装置
核酸分子配列情報を解析することができます。
・ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)
ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS)は、分離した成分の検出に質量分析計を用いることで、質量情報から成分の定性及び定量を行うことができます。
・高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
高速液体クロマトグラフィーとは、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)とも呼ばれ、定性定量を行うために使用されるもっとも一般的な分析手法のひとつです。食品に含まれる複数の溶質成分を迅速かつ同時に定性定量することが可能で、分析値の再現性にも優れています。
静岡県工業技術研究所
静岡県工業技術研究所では下記装置を貸し出しています。
・スプレードライヤー
かつお節のだしなどの原液を瞬時に粉末化することが可能な乾燥装置です。 原液を乾燥室内のノズル(ノズル方式)またはディスク(アトマイザー方式)により微粒化し、連続して熱風を接触させることにより、乾燥させます。
・超微粒摩砕機
グラインダーのクリアランスで粒子の大きさを調節する装置です。湿式と乾式のどちらにも対応できます。
・電気透析装置
陽イオンと陰イオンを選択的に透過する膜の性質を利用し、脱塩や濃縮を行うこうができます。
・フローズンカッター
マイナス15℃前後の食品をカットする装置です。
・チョッパー
玉ねぎやにんにくなどの野菜をみじん切りにしたり、肉をミンチにする機械です。
・薄膜真空蒸発装置
遠心力で薄膜を形成し、水分を蒸発させる装置です。
茨城県工業技術センター
・ドラムドライヤー
ドラムドライヤーは、回転するドラムの内部に蒸気を投入し、加熱されたドラムに液状原材料を供給し、蒸発を行うと同時にドラムの表面に薄膜状に付着させ、すみやかに乾燥を行い、ドラムが1回転する間に乾燥物は固定されたナイフで連続的にドラム表面より掻き取るという乾燥装置です。
・微粒摩砕機
超微粒化を可能にした摩砕機です。
・ニーダー
羽を回転させることにより、投入された原材料を混ぜ合わせる装置です。
・ブレンダー
粉末の原材料を混ぜ合わせる装置です。
・ジュール加熱装置
ポンプで供給できる粘性のある食品や固形物入りの食品を、短時間で連続加熱する装置です。
・急速冷凍機
食品を急速に凍らせることで最大氷結晶生成温度帯を高速で通過します。 そのため、食品内部の細胞組織の破壊とドリップを防ぐことができ、食品の鮮度や味、品質を最大限に保った上で長期保存が可能になります。
・シフター
底に金網を張った筒形の容器に、攪拌する羽が組み込まれた装置です。異物の除去などに用います。
・圧搾機
もろみなどを圧搾して酒と酒粕に分離するのに使用する機械です。
・PCR(polymerase chain reaction)装置
遺伝子を増幅させる装置です。
・塩基配列シーケンサー
DNA配列を解読する装置です。
・ケルダール装置
ケルダール法にて、食品に含まれる窒素の定量を行う装置です。
・ソックスレー装置
食品に含まれる粗脂肪を測定する装置です。このほかに食品メーカーでは酸分解法を用いて脂肪分を分析します。
・塩分分析計
食品に含まれる塩分を分析する装置です。このほかに食品メーカーではモール法を用いて塩分を分析します。
相談事例
私は食品メーカーの製品開発に20年程従事しています。自社の設備では到底できない製品開発を行うこともあります。協力してもらえる工場はあるのに、ラボレベルでの試作や品質の検証ができない。そんなときは、各都道府県にある食品の研究機関に相談し、指導を仰ぎながら、製品化に取り組みます。
どこの研究機関に訪問しても、快く対応してもらえるので、とても助かっています。
まとめ
食品の製品開発を行う際に設備がなく、どうしようかと途方に暮れることもあるかもしれません。
しかし、各都道府県には、このような悩みや抱えている課題をサポートしてくれる機関があります。事前に申し込めば、格安で加工する装置や分析機器を借りることができ、製品開発の一助となることは、間違いありません。
装置の使い方が分からなくても、技術に精通した担当者が丁寧に指導や加工におけるアドバイスをしてくれます。
製品開発の際に悩みごとがあれば、相談してみてはいかがしょうか。