【伝統芸能】落語に登場する「食」

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 噺の最後にオチがつくのが落語の特徴です。落語は身振り手振りのみで噺を進め、衣装や舞台装置などを極力使わず、演者の技巧と聴き手の想像力で噺の世界が広がっていくとてもシンプルで身近な芸能です。

 落語の始まりは、室町時代末期から安土桃山時代にかけて、戦国大名のそばに仕え、話の相手をしたり、世情を伝えたりする御伽衆(おとぎしゅう)と呼ばれる人たちでした。江戸時代に入ると有料で噺を聞かせる人物が登場し、こうして、寄席が誕生しました。

 落語に登場する食べ物を見ると今も食べられている料理もある一方、ほとんど食べられなくなったものもあります。

落語とは

 落語は、噺の最後にオチがつくのが特徴です。歌舞伎などほかの伝統芸能と違い、落語は身振り手振りのみで噺を進め、1人何役をも演じます。衣装や舞台装置などを極力使わず、演者の技巧と聴き手の想像力で噺の世界が広がっていくとてもシンプルで身近な芸能です。

 落語の始まりは、室町時代末期から安土桃山時代にかけて、戦国大名のそばに仕え、話の相手をしたり、世情を伝えたりする御伽衆(おとぎしゅう)と呼ばれる人たちでした。その中の1人である安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)という浄土宗の僧侶は、豊臣秀吉の前で滑稽なオチのつく噺を披露してたいへん喜ばれました。

 江戸時代に入ると有料で噺を聞かせる人物が登場し、大阪では米沢彦八、京都では露の五郎兵衛、江戸では鹿野武左衛門などが活躍しました。こうして、寄席が誕生しました。

落語に見る江戸時代の庶民の食

 江戸時代の庶民は一体何を食べていたのでしょうか。落語に登場する食べ物を見ると今も食べられている料理もある一方、ほとんど食べられなくなったものもあります。 

 落語に登場する食べ物としては、てんぷら、玉子焼き、ぼたもち、どじょうなべ、たくあん、大根、饅頭、湯豆腐、刺身、酢の物、塩焼き、寿司、田楽、いわし、冷や奴、きゅうり、奈良漬け、紅生姜、鰻の蒲焼、お茶漬け、古漬け、豆腐、酢豆腐、唐茄子、くわいのきんとん、鯉のあらい、青菜、そば、さんま、中トロ、たら、昆布、あんこう鍋、茹蛸、鍋焼きうどん、餅、猪鍋、ふぐ、しじみ、はぜ、納豆、佃煮、おでん、卯の花、がんもどき、酢蛸、棒鱈などです。

食にまつわる落語のあらすじ

・饅頭こわい

 町内の若い連中が集まってわいわいガヤガヤ。誰かが各々の好きな物は何かと聞くと、酒、女子(おなご)、羊羹、蓮根の天ぷら、鯛の茶漬け、おぼろ月夜、よく聞くと月夜に大金を拾い、落とし主が現れず自分の物になるなんて、獲らぬ狸の都合のいい話で、本当は塩えんどうが好きという。

 今度は嫌いな物、こわい物の話だ。蛇、なめくじ、ムカデ、芋虫、蟻なんてたわいもない物ばかり。狐が嫌いというやつ、助けた女狐がお礼に人を化かす所を見せてやろうと誘われ、逆に化かされて馬の尻の穴を覗かされたからという。

 ワイワイ言っている所へ入って来た連中の先輩のオヤジさんのこわい話。死んだ婆さんが、鍋一杯に炊いたのりをつけて、浴衣を洗った。あの浴衣は本当にこわかったで、みなずっこける。

 オヤジさんが、今度は本当に怖い目にあった話を始める。若い頃、南農人町のお祓い筋付近のおじの家からの夜更けの帰り道、農人橋で身投げをしようとする女を助けようとしたが、女は死にたいの一点張り。むかっときて、後ろからぽんと押して川へ突き落した。

 女は川に落ちたが死にきれず、岸に上がってオヤジの後をつけ出した。気づいたオヤジは、辻堂の賽銭箱の後ろに隠れて女を待ち伏せして捕まえて安堂寺橋から投げ込んだ。

 ところが、自分が川にはまってしまい、橋の下の舟に頭をぶつけ目から火が出た。その火で足をやけどして、あまりの熱さに熱いと叫んだ声で目が醒めた。櫓炬燵(やぐらごたつ)に入って寝てしまって見た夢の話で、またずっこけたが川にはまってずぶ濡れになったと思ったら、寝小便をたれていたのは本当だったと。

 隅で黙って聞いていた光さんに嫌いな物、こわい物を聞く。光さんは口に出すだけで、震えがくるほどこわい物があるという。連中が問い詰めると、饅頭という。光さんは顔を蒼ざめ震えだして家に帰ってしまう。

 連中は面白がって、色んな饅頭を買ってきて、光さんの家に放り込んで光さんが転がり回ってこわがるのを見て楽しもうという悪巧みだ。早速、薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう)、栗饅頭、そば饅頭、田舎饅頭、太鼓饅頭、へそ饅頭を買い集め、光さんの家へ。

 連中はやっと震えが収まったという光さん目がけ、お見舞いだと言って饅頭を投げ込む。すぐに光さんは七転八倒してこわがると思いきや、部屋の中は静かだ。

 誰かが光さんはあまりの怖さで心臓が止まって死んだのだと言い出す。光さんはショック死で、皆、人殺しの連帯責任。新聞に饅頭殺人事件、共謀して男を饅頭にて殺すと載るだろうと言う。

 当の光さんは部屋中の饅頭を見て、連中がまんまと引っ掛かったので大満足。連中が帰ってからゆっくり食べるつもりだったが、我慢できずに薯蕷饅頭から食べ始める。

 家の中の様子がおかしいのに気づいた連中は中を覗いてびっくり、だまされたことが分かる。連中は飛び込んで、光さん、あんたの本当にこわいのは何だと聞く。

 今度は熱いお茶がこわい。

・二番煎じ

 昔は町内に番小屋があり、番太郎がいて夜回りをしていたが、酔っ払って寝てしまったり寒いので夜回りをさぼったりすることが多かった。そこで町内の旦那連中が集まり夜回りをすることがあった。またそれを見回る町役人もいた。

 今夜も町内大勢の旦那方が番屋に集まる。寒く風の強い夜で、月番が宗助さんにすきま風が入らないようにゴザを立てかけるように言いつけ、こんなに大勢でなく二手に分かれて夜回りをしようと持ちかける。そうすれば一方が回っている間は、片方は暖かい番屋の中で休めるので皆、大賛成だ。

 月番が宗助さんに提灯を持たせ、第一陣の夜回りが出発する。あまり寒いのでふところに入れているため拍子木が鳴らず、金棒も引きずっているから音も出ない。

 月番が、火の用心の掛け声を出すように言うと、謡の口調や浪曲調の火の用心が飛び出す。

 そんなこんなで寒風の吹きさらしの中、すっかり冷え切って一回りを終え番屋へ戻ると、二組目が出発する。月番は宗助さんに火鉢にもっと炭を入れろと催促する。誰かが月番に酒を差し出す。娘が、体が暖まるものをと持たせてくれたのだという。

 月番は、番小屋に酒なんか持込んで心得違いもはなはだしいなんて言いながら、宗助さんに土びんのお茶を開けさせ、その中に酒を入れさせる。番小屋に酒はまずいが、土びんに入った風邪の煎じ薬ならさしつかえないということだ。

 するとあちこちから自分も酒を持ってきたと差し出す。皆、考えることは同じ、月番までもが酒を持ってきたと白状する始末。

 今度は酒の肴にと猪の肉、ねぎ、みそが出てきた。鍋は背中に背負っている。早速酒盛りが始まる。皆寒いところから帰ってきたのですぐ酔いが回っていい気分になる。

 そこにばん、ばんという声。月番は、横丁のかまぼこ屋の赤犬が猪の肉の匂いを嗅ぎつけやって来たと思い、しっしっと追い返そうとする。

 番、番、番の者はおるかと見回りの役人がやって来た。さあ大変だ。あわてて猪の鍋を股の下に隠したりしている。月番はなんでも宗助さんのせいにしようとする。役人は、今しっしっと言っていたのは何かと聞く。

 月番は、あれはこの宗助さんが寒いので火、火と申しましたと言い、役人は土びんのような物を片付けたようだがあれはなんだと更に追い討ちをかける。

 月番は、あれはこの宗助さんの風邪の煎じ薬です、役人は自分も風邪を引き込んで困っているので飲ませろという。仕方なく土びんの酒を飲ませると、寒い時にはもってこいの煎じ薬だなんて言い、さらに鍋のような物を隠したようだがとしつこい。

 月番はまたも、あれはこの宗助さんの煎じ薬の口直しです、なんて言い訳をするが股下に隠してあった猪の鍋まで食べられてしまう。すっかり調子に乗った見回りの役人はもう一杯と酒をせがむ。

 旦那連中からこれ以上飲まれたら自分達の分が無くなってしまうからもう断ってしまえと言われて、月番はもう一滴もございませんと言うと町役人は、無い、無いとあらばいたし方ない。拙者もう一回り回ってくる来る間に二番を煎じておけ。

・三方一両損

 神田白壁町の長屋に住む左官の金太郎。ある日、柳原の土手で、同じく神田堅大工町の大工で熊五郎名義の書きつけと印形、三両入った財布を拾ったので、さっそく家を訪ねて届ける。

 ところが、偏屈で宵越しの金を持たない主義の熊五郎は、印形と書きつけはもらっておくが、オレを嫌って勝手におさらばした金なんぞ、もうオレの物じゃねえから受けとるわけにはいかねえ、そのまま持って帰れと言い張って聞かない。

 人が静かに言っているうちに持っていかないとためにならねえと言い出し、親切心で届けてやったのを逆にすごむ始末なので、金太郎もカチンときて、大げんかになる。

 騒ぎを聞きつけた熊五郎の大家が止めに入るが、かえってけんかが飛び火する。熊がこの逆蛍、店賃はちゃんと入れてるんだから、てめえなんぞにとやかく言われる筋合いはねえと毒づいたから、大家はカンカン。こんな野郎はあたしが召し連れ訴えるから、今日のところはひとまず帰ってくれと言うので、腹の虫が納まらないまま金太郎は長屋に引き上げ、これも大家に報告すると、こちらの大家も向こうに先に訴えられたんじゃあ、てめえの顔は立ってもオレの顔が立たないと、急いで願書を書き、金太郎を連れて恐れながら奉行所へ。

 これより名奉行、大岡越前守様のお裁きとあいなる。お白州でそれぞれの言い分を聞いいたお奉行さま。問題の金三両に一両を足し、金太郎には正直さへの、熊五郎には潔癖さへのそれぞれ褒美として、各々に二両下しおかれる。金は、拾った金をそのまま取れば三両だから、都合一両の損。熊も、届けられた金を受け取れば三両で、これも一両の損。奉行も褒美に一両出したから一両の損。したがって三方一両損で、これにて丸く納まるという、どちらも傷つかない名裁き。

 二人はめでたく仲直りし、この後奉行の計らいで御膳が出る。これ両人とも、いかに空腹でも腹も身のうち。たんと食すなよ。

 へへっ、多かあ(大岡)食わねえ。たった一膳(越前)。

まとめ

 噺の最後にオチがつくのが落語の特徴です。落語は身振り手振りのみで噺を進め、衣装や舞台装置などを極力使わず、演者の技巧と聴き手の想像力で噺の世界が広がっていくとてもシンプルで身近な芸能です。

 落語の始まりは、室町時代末期から安土桃山時代にかけて、戦国大名のそばに仕え、話の相手をしたり、世情を伝えたりする御伽衆(おとぎしゅう)と呼ばれる人たちでした。江戸時代に入ると有料で噺を聞かせる人物が登場し、こうして、寄席が誕生しました。

 落語に登場する食べ物を見ると今も食べられている料理もある一方、ほとんど食べられなくなったものもあります。

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