【世界各地で造られる】薬用酒

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 古来、お酒は薬として扱われました。お酒を飲むことで体が温まり、気持ちが高揚し、食欲が増進するなど普段の食べ物からは得られない作用が、重宝されました。一方、人類は口にする食べ物の中で、体調が良くなる、あるいは気分がよくなる経験を重ねることで、薬となる食べ物、すなわち生薬を発見しました。しかし、生薬の中には、そのままでは飲みにくいものもあります。創意工夫の結果、お酒の中に生薬を浸漬させ、成分を取り出す方法が編み出されました。それが薬用酒です。

 一般的な薬用酒の製法としては、生薬1に対して、お酒10の割合となり、浸透圧を上げ成分の抽出効率を高めるために砂糖や氷砂糖などを入れます。漬ける期間は、葉や花で1~2週間、根や茎で1~3ヶ月間です。直射日光を避け、暖かい場所に置いておくと効率よく抽出できます。できあがった薬用酒は、茶漉やガーゼで濾します。このままでも飲用できますが、熟成のため6~12ヶ月間程度冷暗所で保管することもあります。

 服用量は濃度にもよりますが、1回あたり10~20mlをそのまま飲む、水やお湯、炭酸水などで割って飲む方法があります。

薬用酒の歴史

 古来、お酒は薬として扱われました。お酒を飲むことで体が温まり、気持ちが高揚し、食欲が増進するなど普段の食べ物からは得られない作用が、重宝されました。

 一方、人類は口にする食べ物の中で、特別な作用があるものが存在することに気付きました。体調が良くなる、あるいは気分がよくなる経験を重ねることで、薬となる食べ物、すなわち生薬を発見しました。

 しかし、生薬の中には、そのままでは飲みにくいものもあります。体が弱った人でも服用しやすいようさまざまな方法が考えられました。水で煮だす、すりつぶして粉にする、お酒と一緒に服用するなどです。このような創意工夫の結果、お酒の中に生薬を浸漬させ、成分を取り出す方法が編み出されました。それが薬用酒です。

 生薬を直接お酒に浸漬させることは理にかなっていました。アルコールは、生薬の成分を浸出しやすく、体に吸収されやすくしてくれ、保存性も優れています。香りは、快い刺激になります。人類の生活に有用だったため、世界各地でその土地ならではの薬用酒が造られています。

 西洋では、ローマ時代に強壮剤などの薬としての薬酒づくりがさかんになりました。漢方では、内用薬として薬酒が用いられており、現在でも中国では千種類以上もの薬酒が飲まれていると言われています。日本の薬酒の歴史も深く、お正月に飲まれるお屠蘇は、みりんに桔梗などの生薬を浸けた薬酒です。現在も各地で薬用酒が造られていますが、数百年の歴史を持つものも少なくありません。さまざまな地域で健康維持に役立てられてきたのが、薬用酒です。

薬用酒のアルコールの効果

 アルコールは、適度に胃を刺激することで食欲を増進させ、胃粘膜から急速に吸収されます。少量で中枢を興奮させ、大量になると抑制が起ります。

 アルコールは、血管を拡張させ、血流を良くします。そのため体が温まり、血行改善に役立ちます。

 アルコールは、生薬の水溶性成分と脂溶性成分のいずれも同時に抽出でき、アルコールの殺菌効果で、薬草のみならず、食品の長期の保存を可能にします。生薬の量もそれほど多くを必要とせず、薬用酒として毎日少量ずつ飲めばいいので、経済的にも優れています。

薬用酒の製法

 薬用酒は、みりん、焼酎、ワインといったお酒に生薬の成分を溶出させたものです。配合する生薬のすべてを同時にお酒に浸けこむ方法は、合醸法と呼ばれています。製造工程中に複数の生薬の薬効成分が抽出され、生薬単体では得られない幅広い効果を得ることができると言われます。

 一方、生薬を合わせて浸けこむのではなく、ひとつひとつの生薬をアルコールに浸出した後に抽出液を混合する方法もあります。近年では生薬のエキスを抽出し、アルコールと混合して造る技術が確立しています。安定した品質のものを供給しやすいという利点があります。

 いずれにしても、生薬とお酒が混じり合うことで、原材料の特徴を活かした独特の効果と香りを持つ薬用酒が生まれます。

 一般的には生薬1に対して、お酒10の割合となり、浸透圧を上げ成分の抽出効率を高めるために砂糖や氷砂糖などを入れます。漢方の考え方では、はちみつが推奨されています。お酒1Lに対して、生薬100gが目安です。

 生の生薬を漬ける場合は、水分が80~90%程度あるので、必ずアルコール35度以上のお酒を用います。

 漬ける期間は、葉や花で1~2週間、根や茎で1~3ヶ月間です。直射日光を避け、暖かい場所に置いておくと効率よく抽出できるので、浸けておく期間は短縮できます。できあがった薬用酒は、茶漉やガーゼで濾します。このままでも飲用できますが、熟成のため6~12ヶ月間程度冷暗所で保管することもあります。

 薬用酒に用いられる生薬は、以下の通りです。

・烏樟(ウショウ)

 クロモジの木や皮を用います。かじったり擦ったりするとさわやかな香りがあります。

・紅花(コウカ)

 ベニバナの花を用います。鮮やかな赤色で、染料や油としても用いられ、血色を良くする作用があります。

・益母草(ヤクモソウ)

 メハジキの地上部です。西洋でもローマ時代から女性向けの薬として用いられてきました。

・鬱金(ウコン)

 ウコンの根茎を用います。鮮やかな黄色を呈し、ターメリックとして、カレーづくりに欠かせないスパイスです。

・地黄(ジオウ)

 アカヤジオウの根です。可憐な花とちりめん状の葉が特徴的な植物で、古くから体力をつける生薬として知られています。

・人参(ニンジン)

 乾燥させたオタネニンジンの根を用います。中国では3,000年以上前から用いられています。強壮剤の代名詞的な存在です。

・淫羊藿(インヨウカク)

 イカリソウの地上部を用います。これを食べた羊が元気になったという故事から、強壮効果が知られています。

・芍薬(シャクヤク)

 シャクヤクは美しい花を咲かせます。生薬には根を用います。

・肉蓯蓉(ニクジュヨウ)

 肉質茎を用います。滋養強壮の作用があります。

・杜仲(トチュウ)

 トチュウは、一科一属一種の植物分類的にも珍しい植物です。杜仲の樹皮に含まれるリグナンは、抗ストレス、更年期障害、血圧降下、滋養強壮に有用であることが報告されています。また、杜仲の樹皮は、古くから降圧、利尿、強壮、鎮痛のために使われてきました。

・桂皮(ケイヒ)

 クスノキ科のケイの樹皮を用います。香りがよく、スパイスとしてはシナモンと呼ばれます。健胃薬として知られています。

・丁子(チョウジ)

 チョウジのつぼみを用います。クローブの名前で、スパイスとしても広く用いられます。香りが食欲を増進させます。

・防風(ボウフウ)

 ボウフウの根や根茎を用います。お正月に飲むお屠蘇にも使われています。

・反鼻(ハンピ)

 マムシの皮と内臓を取り除いた生薬です。古くから強壮効果が知られています。

薬用酒の服用

 服用量は濃度にもよりますが、1回あたり10~20mlをそのまま飲む、水やお湯、炭酸水などで割って飲む方法があります。

 食前酒としても良く、就寝前に飲むことも良いとされています。

 漢方薬のにおいが気になる場合は、飲むときにレモンを 滴下します。

まとめ

 古来、お酒は薬として扱われました。お酒を飲むことで体が温まり、気持ちが高揚し、食欲が増進するなど普段の食べ物からは得られない作用が、重宝されました。一方、人類は口にする食べ物の中で、体調が良くなる、あるいは気分がよくなる経験を重ねることで、薬となる食べ物、すなわち生薬を発見しました。しかし、生薬の中には、そのままでは飲みにくいものもあります。創意工夫の結果、お酒の中に生薬を浸漬させ、成分を取り出す方法が編み出されました。それが薬用酒です。

 一般的な薬用酒の製法としては、生薬1に対して、お酒10の割合となり、浸透圧を上げ成分の抽出効率を高めるために砂糖や氷砂糖などを入れます。漬ける期間は、葉や花で1~2週間、根や茎で1~3ヶ月間です。直射日光を避け、暖かい場所に置いておくと効率よく抽出できます。できあがった薬用酒は、茶漉やガーゼで濾します。このままでも飲用できますが、熟成のため6~12ヶ月間程度冷暗所で保管することもあります。

 服用量は濃度にもよりますが、1回あたり10~20mlをそのまま飲む、水やお湯、炭酸水などで割って飲む方法があります。

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