昨今の技術の進歩に伴い、食品分野以外で確立されている加工装置や加工技術が導入される事例も見られるようになってきています。これらの新しい加工技術は、新たな食品の開発や新たな食品の製造工程を創出しています。
エクストルージョンクッキングの特徴は、スクリュー回転により原材料を移送しながら、原材料の内部発熱、外部からの加熱、原材料の粘性や充填による内部での圧力の発生により連続的な高温高圧条件を装置内部で生み出し、反応や殺菌などの加工を行うことです。
通電加工技術は、食品自体に電気を流して、発熱させる加熱方法です。 通電加熱では、食品を均一かつ迅速に加熱することが可能なため、原材料の中心の加熱不足、表面の過加熱による焦げなどの問題を回避することができます。
過熱蒸気加工技術は、飽和水蒸気を誘導加熱装置や熱交換器などを用いて加熱してつくられる過熱水蒸気を用います。過熱水蒸気は加熱媒体として、水蒸気に由来する熱容量を持つことで乾燥空気に比べて熱の伝達速度が速い、加熱乾燥時の表層の硬化が起こりにくい、表面が湿った状態となるために表面に付着している微生物の効果的な殺菌ができる、食品成分が溶出するのを抑制するといったことが期待されています。さらに装置の工夫により低酸素状態を加熱工程全般に渡って制御することが可能となれば、脂質の酸化、酸化反応による褐変、成分変化を防ぐことによる食品の高品質化が期待されます。
成長が期待される食品の新たな加工技術
食品の加工技術は、粉砕、混合、抽出、乾燥、分離、加熱、冷却、成形、包装などがあります。基本的には、食品製造における製品の安定化、賞味期限の延長、効率化を目的として技術革新が進められてきました。
昨今の技術の進歩に伴い、食品分野以外で確立されている加工装置や加工技術が導入される事例も見られるようになってきています。これらの新しい加工技術は、新たな食品の開発や新たな食品の製造工程を創出しています。
新たな加工技術の現状
・エクストルージョンクッキング
技術として既に確立されているエクストルーダ、すなわち、スクリュー押出機の食品加工への利用が盛んに行われたのは、1980年前後です。その後、食品メーカーや装置メーカーによりさまざまな研究がなされ、現在では多様な製品が食品の製造工程に導入されています。
エクストルーダの最大の特徴は、スクリュー回転により原材料を移送しながら、原材料の内部発熱、外部からの加熱、原材料の粘性や充填による内部での圧力の発生により連続的な高温高圧条件を装置内部で生み出し、反応や殺菌などの加工を行うことです。
スクリュー配列により内部の圧力を水の蒸気圧以上に高めることで、水を含む食品の成分は、液体としての挙動を示します。このため、内部で溶融などさまざまな反応が制御でき、大豆たんぱく質などを原材料として、内部で溶融し成形して肉様の食材への変換を行うことができます。また、内部圧力により溶融したでんぷんを出口から押し出すことで、大気中に出た際の圧力差により、でんぷん中の水分が一瞬に水蒸気化し、組織中に多くの気泡をもつ膨化食品を製造することができます。
さらに豆腐製造時のおから、農作物の加工副産物の変換処理にも使用されています。
・通電加工技術
通電加熱は、食品自体に電気を流して、発熱させる加熱方法です。 この発熱量は、原材料の抵抗によって計算できます。
通電加熱では、食品の電気抵抗が大きいもの、つまり、脂肪分の多いものや低水分のものでは効率的な加熱処理はできませんが、この電気抵抗は周波数により変わるので、商用周波数の50~60Hzから20kHz程度まで増加させることにより、食品の抵抗が低下して通電による発熱効率が向上します。
通電加熱では、食品を均一かつ迅速に加熱することが可能なため、原材料の中心の加熱不足、表面の過加熱による焦げなどの問題を回避することができます。
細かい加熱制御が可能なため、単にエネルギー効率が良いだけでなく、高品質な食品の製造のために広い分野での利用が検討されています。この技術を用いることで、原材料の表面に焦げが生じないことから、真っ白なパン粉が製造されています。また、魚肉すり身の加工では、通電加熱による昇温速度が大きいため、高いゲル強度をもつ製品がつくられています。さらにソース類の連続処理に適した電極構造の工夫と使用周波数の選択が行われ、その応用範囲が広がっています。
食品の解凍に用いる場合、マイクロ波では電磁波が原材料の内部まで浸透しないため、均一な加熱は望めませんが、通電加熱では使用する周波数が低いため、内部までエネルギーが伝わり、解凍時間の短縮を図ることができます。
野菜などの場合、加温または電解印加により細胞膜の絶縁性を破壊することで、素早い加熱が可能となります。色、香りなど熱に弱い成分も保持した状態で高い殺菌効果が認められ、果汁やジャムなどの殺菌に実用化されています。
・過熱蒸気加工技術
過熱水蒸気は、飽和水蒸気を誘導加熱装置や熱交換器などを用いて加熱してつくられます。常圧(おおよそ0.1MPa)において、100℃の飽和水蒸気を100℃以上に加熱して用います。
過熱水蒸気は加熱媒体として、水蒸気に由来する熱容量を持つことで乾燥空気に比べて熱の伝達速度が速い、加熱対象物表面との温度差により凝縮水層を加熱開始時に形成することとから潜熱による熱の伝播が可能で迅速な加熱ができる、加熱乾燥時の表層の硬化が起こりにくい、表面が湿った状態となるために表面に付着している微生物の効果的な殺菌ができる、蒸すあるいは茹でるといったような従来の湿熱処理では、食品が水分の浸透で軟化すること、食品成分が溶出することなどが危惧される一方、過熱水蒸気ではこのようなことが抑制されるといったことが期待されています。
効率的な加熱と加熱時の食品の特性の改善などを期待して、水産物の焼成処理や野菜などの1次処理などにも用いられ始めています。さらに装置の工夫により低酸素状態を加熱工程全般に渡って制御することが可能となれば、脂質の酸化、酸化反応による褐変、成分変化を防ぐことによる食品の高品質化が期待されます。
農産物の品質を損なわない、低温で熱効率の高い過熱水蒸気による加工技術も提案されています。これは、熱水を120℃程度に制御した加工装置内に噴霧する技術です。微細熱水を含有した過熱水蒸気であり、アクアガスと呼ばれています。
この加工技術は、同じ温度の過熱水蒸気よりも迅速な加熱を実現しており、農産物の生の特性をあまり損なわないで1次処理、表面殺菌処理が可能です。病院食などでの安全性の高い食品製造や加工食品に利用されています。
まとめ
昨今の技術の進歩に伴い、食品分野以外で確立されている加工装置や加工技術が導入される事例も見られるようになってきています。これらの新しい加工技術は、新たな食品の開発や新たな食品の製造工程を創出しています。
エクストルージョンクッキングの特徴は、スクリュー回転により原材料を移送しながら、原材料の内部発熱、外部からの加熱、原材料の粘性や充填による内部での圧力の発生により連続的な高温高圧条件を装置内部で生み出し、反応や殺菌などの加工を行うことです。
通電加工技術は、食品自体に電気を流して、発熱させる加熱方法です。 通電加熱では、食品を均一かつ迅速に加熱することが可能なため、原材料の中心の加熱不足、表面の過加熱による焦げなどの問題を回避することができます。
過熱蒸気加工技術は、飽和水蒸気を誘導加熱装置や熱交換器などを用いて加熱してつくられる過熱水蒸気を用います。過熱水蒸気は加熱媒体として、水蒸気に由来する熱容量を持つことで乾燥空気に比べて熱の伝達速度が速い、加熱乾燥時の表層の硬化が起こりにくい、表面が湿った状態となるために表面に付着している微生物の効果的な殺菌ができる、食品成分が溶出するのを抑制するといったことが期待されています。さらに装置の工夫により低酸素状態を加熱工程全般に渡って制御することが可能となれば、脂質の酸化、酸化反応による褐変、成分変化を防ぐことによる食品の高品質化が期待されます。