【地球上の生命はすべて依存】光合成

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 地球上の生命は、すべて光合成に依存しています。光合成とは、CO2とH2Oを生物が利用できる有機化合物に変える過程です。CO2とH2Oをぶどう糖に変える反応は、ぶどう糖をCO2とH2Oに酸化する反応の逆で、正反応で得られるエネルギーと同量以上のエネルギーを要求します。

 6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2

 ΔG=+686kcal

 このエネルギーが光で供給されます。

 光合成の規模は、人工的なエネルギー転換などが及びもつかない大きさで、1年間に固定される炭素は、2,000億トンに達します。1molのCO2を固定するのに114kcal要るとすれば、毎年2×10¹⁸kcalのエネルギーがバイオマスとして貯蔵されたことになります。これは、地上に降り注ぐ太陽光エネルギーの0.1%にあたります。

光合成でCO2を糖類に還元するには、NADPHとATPが必要です。サイクル式光リン酸化では、ATPだけを生じ、電子供与体や受容体の酸化還元を伴いません。非サイクル式光リン酸化では、ATPを生じるとともに水から電子がNADP⁺のような電子受容体に移り、これに伴ってO2が発生します。この反応で、電子の流れはミトコンドリアのときとは逆になります。電位勾配に逆らって電子が逆流するにはエネルギーが必要で、光がこのエネルギーを供給します。

高等緑色植物、多細胞の紅藻、緑藻、褐藻、珪藻などの真核細胞では、光合成はプロトプラストで行われます。クロロプラストは、クロロフィルa、クロロフィルbなどの光合成色素を含みます。光合成生物は、いろいろな光合成色素を含みますが、光エネルギーを高エネルギー化合物に変える過程で、直接光で励起されて電荷分離を起こし、光電子伝達系を始動させるのは、クロロフィルaだけです。ほかの色素は直接エネルギー転換には関与せず、エネルギーの高い短波長光を集め、これを共鳴移動によって、クロロフィルaに渡す役割を持ちます。

 光は光子という粒子の波です。短波長の青色光の方が、長波長の赤色光よりエネルギーが大きくなります。物質は光を吸収します。電子がエネルギーを獲得し外側の高エネルギー準位の軌道に移ると原子は励起状態となります。励起する方法は、光子を吸収することです。励起状態の原子は不安定で、電子は外側の軌道から内側の軌道に戻ろうとします。まず電子は励起状態より少し低エネルギー準位の軌道に戻り、熱を放出します。さらに電子がもとの軌道に戻るとき、残りのエネルギーは蛍光やりん光として放出されます。

光合成のエネルギー利用効率は、48%となります。

光合成の概要

 地球上の生命は、すべて光合成に依存しています。光合成とは、CO2とH2Oを生物が利用できる有機化合物に変える過程です。CO2とH2Oをぶどう糖に変える反応は、ぶどう糖をCO2とH2Oに酸化する反応の逆で、正反応で得られるエネルギーと同量以上のエネルギーを要求します。

 6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2

 ΔG=+686kcal

 このエネルギーが光で供給されます。

 解糖系などにつづき光合成系が進化したのは、クロロフィルなどの色素類ができたからです。これらの色素は、太陽光エネルギーを化学エネルギーに転換し、ATPを生産する過程、すなわち光リン酸化に必要です。

 CO2が空気中にたまったとき、光リン酸化にペントースリン酸経路を組み合わせて、CO2の還元が始まりました。ペントースリン酸経路とは、細胞質内で進行するグルコース6リン酸を出発点としリボース5リン酸 などの 5 炭糖及びNADPH を生成する経路です。5 炭糖は、ホスホリボシルピロリン酸となり、ヌクレオチド(DNAやRNA の構成単位) の原材料として用いられます。NADPH は還元剤で、脂肪酸やステロイドの合成、過酸化物の無害化 などさまざまな反応に用いられます。

光合成の規模

 光合成の規模は、人工的なエネルギー転換などが及びもつかない大きさで、1年間に固定される炭素は、2,000億トンに達します。1molのCO2を固定するのに114kcal要るとすれば、毎年2×10¹⁸kcalのエネルギーがバイオマスとして貯蔵されたことになります。これは、地上に降り注ぐ太陽光エネルギーの0.1%にあたります。

 植物を照らす太陽光のうちクロロプラストに吸収されるのは、10分の1と見積もられ、その1%がバイオマスの生産に使われたことになります。

 バイオマスの大部分は、セルロースとリグニンで食用とはなりませんが、燃料としての熱エネルギーの供給やセルロースを食べるシロアリ腸管微生物などとして利用されます。

光リン酸化

 光合成でCO2を糖類に還元するには、NADPHとATPが必要です。1954年にArnonらは、特殊な方法で単離したクロロプラストが明所でCO2を糖類に変えることを発見し、さらにミトコンドリアがなくても、光を当てればクロロプラストが2通りの方法でATPを生産することを示しました。ひとつは、サイクル式光リン酸化でATPだけを生じ、電子供与体や受容体の酸化還元を伴いません。

 ADP+H3PO4→ATP+H2O

 もうひとつは、非サイクル式光リン酸化で、ATPを生じるとともに水から電子がNADP⁺のような電子受容体に移り、これに伴ってO2が発生します。この反応で、電子の流れはミトコンドリアのときとは逆になります。ミトコンドリアでは、NADHからO2に電子が流れるのに伴って、遊離するエネルギーの一部がATPの生産に利用されますが、H2Oから電子が逆流して、NADP⁺をNADPHに還元します。電位勾配に逆らって電子が逆流するにはエネルギーが必要で、光がこのエネルギーを供給します。また、電子がH2OからNADP⁺に逆流しながら、ATPも生産します。

 2NADP⁺+2H2O+2ADP+2H3PO4→2NADPH+2H⁺+O2+2ATP+2H2O

光合成器官

藍藻、紅色細菌、緑色細菌など原核細胞では、光合成はクロマトホアで行われます。高等緑色植物、多細胞の紅藻、緑藻、褐藻、珪藻などの真核細胞では、光合成はプロトプラストで行われます。

 クロロプラストは、クロロフィルa、クロロフィルbなどの光合成色素を含みます。高等緑色植物では、β-カロテンなどのカロテノイドもあります。

 光合成生物は、いろいろな光合成色素を含みますが、光エネルギーを高エネルギー化合物に変える過程で、直接光で励起されて電荷分離を起こし、光電子伝達系を始動させるのは、クロロフィルaだけです。ほかの色素は直接エネルギー転換には関与せず、エネルギーの高い短波長光を集め、これを共鳴移動によって、クロロフィルaに渡す役割を持ちます。これをアンテナ色素と言います。

光の性質

 光は光子という粒子の波です。短波長の青色光の方が、長波長の赤色光よりエネルギーが大きくなります。紫外線(395nm)は72kcal/mol、青色光(490nm)は58kcal/mol、赤色光(650nm)は44kcal/mol、赤外線(750nm)は38kcal/molです。

 物質は光を吸収します。その吸収能力は原子構造で決まります。電子がエネルギーを獲得し外側の高エネルギー準位の軌道に移ると原子は励起状態となります。励起する方法は、光子を吸収することです。原子にはいろいろな励起状態があり、どの状態になるかは吸収する光の波長で決まります。

 励起状態の原子は不安定で、電子は外側の軌道から内側の軌道に戻ろうとします。まず電子は励起状態より少し低エネルギー準位の軌道に戻り、熱を放出します。さらに電子がもとの軌道に戻るとき、残りのエネルギーは蛍光やりん光として放出されます。

 クロロフィルは、赤と青の可視光線を吸収します。青色光は赤色光よりもエネルギーが大きいので、光合成により有効と考えがちですが、効率は変わりません。

光合成の収率

 光合成のエネルギー所要量として、波長650nmの光は光子1molあたり44kcalのエネルギーを持ちます。光合成に利用されるのはこの70%(30kcal/mol)で、残りは電子が励起準位から遷移状態に移行するときに熱として放出されます。

 一方、エネルギー変換系で2molのNADPHを生産するのに少なくとも光子8molを必要とするため、1molのCO2を糖質に変えるには、8×30=240kcalの光エネルギーを用いることになります。

 この反応の自由エネルギー変化は、+114kcalなので、光合成のエネルギー利用効率は、114/240×100=48%となります。

まとめ

 地球上の生命は、すべて光合成に依存しています。光合成とは、CO2とH2Oを生物が利用できる有機化合物に変える過程です。CO2とH2Oをぶどう糖に変える反応は、ぶどう糖をCO2とH2Oに酸化する反応の逆で、正反応で得られるエネルギーと同量以上のエネルギーを要求します。

 6CO2+6H2O→C6H12O6+6O2

 ΔG=+686kcal

 このエネルギーが光で供給されます。

 光合成の規模は、人工的なエネルギー転換などが及びもつかない大きさで、1年間に固定される炭素は、2,000億トンに達します。1molのCO2を固定するのに114kcal要るとすれば、毎年2×10¹⁸kcalのエネルギーがバイオマスとして貯蔵されたことになります。これは、地上に降り注ぐ太陽光エネルギーの0.1%にあたります。

 光合成でCO2を糖類に還元するには、NADPHとATPが必要です。サイクル式光リン酸化では、ATPだけを生じ、電子供与体や受容体の酸化還元を伴いません。非サイクル式光リン酸化では、ATPを生じるとともに水から電子がNADP⁺のような電子受容体に移り、これに伴ってO2が発生します。この反応で、電子の流れはミトコンドリアのときとは逆になります。電位勾配に逆らって電子が逆流するにはエネルギーが必要で、光がこのエネルギーを供給します。

 高等緑色植物、多細胞の紅藻、緑藻、褐藻、珪藻などの真核細胞では、光合成はプロトプラストで行われます。クロロプラストは、クロロフィルa、クロロフィルbなどの光合成色素を含みます。光合成生物は、いろいろな光合成色素を含みますが、光エネルギーを高エネルギー化合物に変える過程で、直接光で励起されて電荷分離を起こし、光電子伝達系を始動させるのは、クロロフィルaだけです。ほかの色素は直接エネルギー転換には関与せず、エネルギーの高い短波長光を集め、これを共鳴移動によって、クロロフィルaに渡す役割を持ちます。

 光は光子という粒子の波です。短波長の青色光の方が、長波長の赤色光よりエネルギーが大きくなります。物質は光を吸収します。電子がエネルギーを獲得し外側の高エネルギー準位の軌道に移ると原子は励起状態となります。励起する方法は、光子を吸収することです。励起状態の原子は不安定で、電子は外側の軌道から内側の軌道に戻ろうとします。まず電子は励起状態より少し低エネルギー準位の軌道に戻り、熱を放出します。さらに電子がもとの軌道に戻るとき、残りのエネルギーは蛍光やりん光として放出されます。

 光合成のエネルギー利用効率は、48%となります。

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