SDGsは、2015年9月の国連サミットで150を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。
SDGsは、先進国や発展途上国すべての国を対象に、経済、社会、環境の3つの側面のバランスがとれた社会を目指す世界共通の目標として、17のゴールとその課題ごとに設定された169のターゲット(達成基準)から構成されます。
これらは、貧困や飢餓から環境問題、経済成長やジェンダーに至る広範な課題を網羅しており、豊かさを追求しながら地球環境を守り、そして、誰一人取り残さないことを強調し、人々が人間らしく暮らしていくための社会的基盤を2030年までに達成することが目標とされています。
SDGsの目標達成には、公的機関だけではなく、民間企業や市民の参加が不可欠です。特に企業に対しては、ビジネス活動の一環として行う投資やイノベーションを通じて、社会課題を解決することが期待されています。食品産業でも既に実践的にSDGsに取り組んでいます。
SDGS(持続可能な開発目標)
SDGsは、2015年9月の国連サミットで150を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。
SDGsは、先進国や発展途上国すべての国を対象に、経済、社会、環境の3つの側面のバランスがとれた社会を目指す世界共通の目標として、17のゴールとその課題ごとに設定された169のターゲット(達成基準)から構成されます。
これらは、貧困や飢餓から環境問題、経済成長やジェンダーに至る広範な課題を網羅しており、豊かさを追求しながら地球環境を守り、そして、誰一人取り残さないことを強調し、人々が人間らしく暮らしていくための社会的基盤を2030年までに達成することが目標とされています。
SDGSの特徴
SDGsは、社会のあらゆるセクター及び世界各地から寄せられた意見を広く取り入れており、1,500を超える企業や団体が意見や指針を提供してきました。
SDGsは、発展途上国にも先進国にも共通する普遍的目標です。各国政府は、それぞれの国に特有の優先課題や強みを踏まえ、SDGsを自国の行動計画に移し換えることが期待されています。
かつては、環境問題や社会課題は国や国際機関が対処すべきものという考え方が一般的でした。しかし、近年、世界的に深刻化する環境問題及び経済社会問題に対し、国や国際機関だけでは対処しきれない現実に直面しています。
SDGs が対象とするのは主に政府ですが、幅広い分野で活躍する団体も巻き込み、共通の枠組みを土台として、持続可能な開発に向けた協力の優先課題や世界のあるべき姿が打ち出されるように意図しています。SDGsの最も重要な特徴は、目標達成に企業が果たし得る、あるいは果たすべき主要な役割を認識している点にあります。
SDGS実施指針における5つの主要原則
日本政府は2016年12月にSDGs実施指針を決定しました。
政府が関係府省一体となって、あらゆる分野のステークホルダーと連携しつつ、広範な施策や資源を効果的かつ一貫した形で動員していくことを可能にするために、5つの主要原則を定めています。
・普遍性
国内実施と国際協力の両面で率先して取り組む。
・包摂性
誰一人取り残さない。国内実施、国際協力のあらゆる課題への取組において、人権の尊重とジェンダー平等の実現を目指し、子供、若者、高齢者、障害者、難民、国内避難民など、脆弱な立場におかれた人々一人一人に焦点を当てる。
・参画型
脆弱な立場におかれた人々を含む誰もが、持続可能な社会の実現に貢献できるよう、あらゆるステークホルダーの参画を重視し、全員参加型で取り組む。
・統合性
経済、社会、環境の3分野の全てに、複数のゴール、ターゲットの相互関連性、相乗効果を重視しつつ取り組む。
・透明性と説明責任
取組状況を定期的に評価し、公表、説明する。
17の目標と食品産業
2030年に日本の総人口は、1億1900万人となり、高齢化率は31.2%に上昇するとの推計があります。
一方、世界の人口は、爆発的な増加を続け、85億5千万人に達する見込みです。エネルギーや食料資源の需給がひっ迫するだけでなく、地球温暖化など世界規模での環境悪化が懸念されています。
こうした中で、2030年に向けて、すべての人々が豊かで平和に暮らし続けられる社会をめざし、SDGsが国連サミットで採択されました。
SDGsは、世界中の国が共通して解決しなければいけない経済、社会、環境の課題を17の目標で示しており、その達成には公的機関だけではなく、民間企業や市民の参加が不可欠です。特に企業に対しては、ビジネス活動の一環として行う投資やイノベーションを通じて、社会課題を解決することが期待されています。
食品産業でも既に実践的にSDGsに取り組んでいます。
・目標1:地球上のあらゆる形の貧困をなくそう
この目標は、2030年までに、世界中で極度の貧困にある人をなくすこと、様々な次元で貧困ラインを下回っている人の割合を半減させることなどを目指しています。貧困とは、単に収入や資産がないことだけではなく、飢餓、栄養不良、教育や基本的サービスへのアクセス不足、社会的な差別や排除、意思決定からの除外なども含みます。また、弱い立場にある人たちが、気象変動や災害などの影響をより強くうけることも防ぐ必要があります。
国民生活基礎調査によると、全世帯員の相対的貧困率は、2015年には15.7%となりました。年齢別の相対的貧困率を見ると、17歳以下の貧困率は2015年には13.9%、18~64歳は13.6%、65歳以上は19.6%となっています。
世界の極度の貧困にある人の割合は減少していますが、このペースでは2030年に極度の貧困で生活している人は6%になると予測され、2030年までに貧困を終わらせるという目標の達成には至りません。
所得が食事の内容に影響する食の格差が、さまざまな調査で指摘されています。また、所得によって教育などへの機会格差が生じ、企業の持続的な発展に必要な人材の確保という点でも問題となります。 さらに、食品産業の多くが海外に原材料を依存する状況では、持続可能な農林水産物の確保に向けて、生産者の生活を安定させる必要があります。
モスグループでは、食に対する関心の低下の解消、地域行政との連携の観点から、出張授業となるモスの食育プログラム、一人親家庭の子供たちを対象にした学習支援、子ども食堂支援などの活動に取り組んでいます。エスビー食品では、人権への配慮や公正な取引、取引先との共存共栄を柱とした購買基本方針を定め、これに基づいて原料や資材を調達しています。エスビー食品は、市場より高い価格での購入を保証するとともに、原料の購入数量に応じて、生産者組合に直接奨励金を支払います。奨励金は各生産者グループに分配され、話し合いで用途を決定します。これらは農機具や子どもの教材など生活向上のために使われています。
・目標2:飢えをなくし、だれもが栄養のある食料を十分に手に入れられるよう、地球の環境を守り続けながら農業を進めよう
この目標は2030年までに、飢餓とあらゆる栄養不良に終止符を打ち、持続可能な食料生産を達成することを目指しています。また、誰もが栄養のある食料を十分得られるようにするためには、環境と調和した持続可能な農業を推進し、生産者の所得を確保し、農業生産性を高めるための研究・投資を行う必要があります。
日本では主食、主菜、副菜を組み合わせた食事に関する状況は悪化しており、特に20~30 歳代ではこれらを組み合わせた食事を食べている割合が低くなっています。また、所得の低い世帯では、所得の高い世帯と比較して、穀類の摂取量が多く野菜類や肉類の摂取量が少なくなっています。65歳以上の高齢者では、低栄養傾向の者の割合が、男性で12.5%、女性で19.6%です。
世界の食料需給は、世界人口の増加や開発途上国の経済発展による所得向上に伴う畜産物等の需要増加に加え、異常気象の頻発、水資源の制約による生産量の減少などさまざまな要因によって逼迫する可能性があります。
食品産業は、多様な栄養素を含む食品の安定供給を通じて、この目標の達成に中心的な役割を果たすことができます。 国内外の原材料生産者との連携により、持続可能な農業に貢献している事例も多く見られます。
味の素は、グループポリシーの基本原則に栄養改善の取組を掲げ、世界各国のさまざまな人々の栄養ニーズに基づき、毎日の食事の栄養バランスを向上させる製品を供給しています。また、栄養バランスのよいメニューの提案などにも積極的に取組んでいます。伊藤園では、コミュニティと産業育成を重要課題に掲げ、調達の一部で茶農家や行政と協働で取り組む茶産地育成事業を展開しています。キユーピーは、重点課題の中で健康寿命延伸への貢献と資源の有効活用と持続可能な調達を掲げています。また、資源の有効活用について、野菜の未利用部位を資源として無駄にせず、より有効に使う工夫を重ねています。不二製油では、大豆事業の成長を中期経営計画に位置づけ、環境負荷が少ない植物性たん白質で食資源不足の課題解決に貢献することを目指しています。
・目標3:だれもが健康で幸せな生活を送れるようにしよう
この目標は、母子保健を増進し、主要な感染症の流行に終止符を打ち、非感染性疾患と環境要因による疾患を減らすことを含めて、あらゆる年齢のすべての人々の健康と福祉を確保することを目指しています。
日本では特に、20歳代女性のやせの割合が21.7%と高くなっています。若年女性のやせは、骨量減少、低出生体重児出産のリスクなどとの関連があることが示されています。けがや病気で病院などに通院しながら働いている人数は、年々増加しています。生活習慣病などの病気の有病率は年齢が上がるほど高くなる状況にあり、高齢化の進行に伴い、職場においても労働力の高齢化が進むことが見込まれる中、企業において病気を有した労働者への対応が必要となる場面はさらに増えることが予想されます。
世界において、マラリアや結核などへの取組はまだ不十分です。世界人口の少なくとも半分は不可欠な医療サービスを受けられず、過度な経済的困難に苦しむ人々が極度の貧困においやられています。
食品産業は、食品や関連製品・サービスの提供を通じて、人々の健康に大きく貢献することが可能です。 一方で、食品による健康被害は未然に防止しなければなりません。また、安定した企業活動のためには、従業員や取引先、原材料生産者の健康が維持されることが不可欠です。
ヤクルトは、予防医学、健腸長寿、誰もが手に入れられる価格でという考えに基づき、食品、医薬品の研究開発、生産、販売などの企業活動を行っています。ニッポンハムの主な取組は、安全安心な食品づくりと食とスポーツで心と体の元気を応援です。食物アレルギーの研究、対応食品の開発に力を入れるとともに、食を楽しむ体験型イベントや出前授業、食肉成分の研究などに取り組んでいます。日清食品は、カロリーカットや減塩、低糖質、食物繊維や栄養素の配合など健康志向に応える製品開発に取り組んでいます。日本製粉では、栄養バランスの良い食品を食べて健康になることを目指し、パンの副資材などに健康食材を提供する取組を進めてきました。
・目標4 :だれもが公平に、良い教育を受けられるように、また一生に渡って学習できる機会を広めよう
この目標は、2030年までにすべての子供が平等に質の高い教育を受けられるようにすること、高等教育にアクセスできることを目指しています。また、働きがいのある人間らしい仕事や企業に必要な技能を備えた若者・成人の割合を大幅に増加させることもねらっています。
日本では、2030年とその先の世界を担う子供たちに、持続可能な社会や世界の創り手となるために必要な資質、能力が育成されるよう、持続可能な開発のための教育をさらに推進するとともに、学校教育をはじめ、家庭、職場、地域等のあらゆる場におけるSDGsに関する学習などを奨励しています。
教育は社会経済的な地位を向上させ、貧困からの脱出の鍵となりますが、世界では6歳~17歳までの子供たちの5人に1人が依然として未就学で、半数以上の子供と青少年が読書と数学の最低限の習熟基準を満たしていません。また、7億5000万人の大人が、単純な文章の読み書きができません。
食生活の乱れや、3Rに関する認知度の低下などが課題となっている今日では、食品産業も、食育や環境教育などに、より深く関わっていく必要があります。
森永乳業では、未来をつくる子どもたちへのプログラムを作成し、子どもたちに生きる力を身につけてもらいたいという想いから、出前講座などの食育活動や野外教育活動を行っています。さらに、キッザニアでの職業体験や企業インターンワークの実施など、キャリア教育を支援しています。
・目標5 : 男女平等を実現し、すべての女性と女の子の能力を伸ばし可能性を広げよう
この目標は、女性が潜在能力を十分に発揮して活躍できるようにするため、教育や訓練の充実はもとより、有害な慣行を含め、女性と女児に対するあらゆる形態の差別と暴力をなくすことを目指しています。経済分野においても、あらゆるレベルの意思決定において女性の平等な参画とリーダーシップの機会の確保が求められています。
2018年の日本の就業者に占める女性の割合は44.2%で、諸外国と比較して大きな差はありません。しかしながら、同年の管理的職業従事者に占める女性の割合について見ると14.9%であり、諸外国と比べると依然として際立って低い水準となっています。第1子出産後の女性の継続就業割合は53.1%であり、半数近くの女性が出産を機に離職しています。さらに男性の子育てや家事に費やす時間も先進国中最低の水準です。
食品産業は他産業に比べて女性の就業率が高い産業です。今後も人手不足が深刻化する中で、将来にわたって優れた人材を確保するためには、女性が働きやすい職場環境や、その能力が育ち活躍しやすい仕組みの構築が不可欠です。
日本コカ・コーラでは、2020年までに女性管理職比率を30%にするとの目標の下、女性社員の能力開発、女性社員同士のサポート体制の強化、リーダーシップ人材の育成、働きがいのある環境づくりなどに注力しています。ヤクルトでは、世界で8万人超のヤクルトレディが宅配システムを中心とした健康に寄与する製品のお届けのほか、健康的な生活習慣の定着に向けた啓発活動、地域貢献活動に取り組んでおり、就労の機会を通じて、女性の活躍を推進しています。
・目標6:だれもが安全な水とトイレを利用できるようにし、自分たちでずっと管理していけるようにしよう
この目標は飲料水、衛生施設、衛生状態を確保するだけではなく、水源の質と持続可能性をめざすものです。
日本は降水量が多く水が豊かな国ですが、河川の流量は一年を通じて変動が大きく、安定的な水利用を可能にするためにダムや堰等の水資源開発施設を建設しています。
世界では、7億8500万人もの人が基本的な飲料水サービスを受けられずにいます。5人に一人が、家に水のある手洗い設備をもっておらず、医療施設の4つに1つが飲料水サービスを欠いています。2030年までに7億人が、過酷な水不足によって住居を追われる可能性があります。6億7300万人が屋外で排泄しており、その多くが南アジアです。
食品産業は、事業で多量の水を消費するだけでなく、食品の原材料となる農産物や資材の生産過程でも莫大な水を必要としています。このため、サプライチェーン全体を通じて安全な水が持続的に確保されることが、企業の将来にとって不可欠です。
サントリーでは、事業活動にとっても重要な原材料の水を守ることが最重要課題であると位置づけ、水源保全を行うことで、水と生きるという企業理念を実践しています。明治は、2030年度に向けて、国内水使用量を2015年度比で20%以上削減する目標を設定しています。この目標に向けて、生産工程の見直しによる水利用の効率化、適正な排水管理、国内外の事業所周辺地域の水リスクの評価に取り組んでいます。
・目標7:すべての人が、安くて安全で現代的なエネルギーをずっと利用できるようにしよう
この目標は、国際協力の強化や、クリーンエネルギーに関するインフラと技術の拡大などを通じ、エネルギーへのアクセス拡大と、再生可能エネルギーの使用増大を推進しようとするものです。
日本には、太陽光、風力、水、地熱など豊富な再生可能エネルギーが、特に地方部に多く存在しています。これまで地域外に支払ってきたエネルギー代金を地域内の再生可能エネルギーの導入や投資に回すことで、エネルギー収支を改善し、足腰の強い地域経済の構築、新たな雇用創出や災害時の強靭さ(レジリエンス)の向上にもつながる効果が期待されます。
世界では、10人に9人が電力にアクセスできるようになり、エネルギー消費の17.5%が再生可能エネルギーとなっています。しかし、今も電気なしで暮らす人は8億4千万人おり、その87%が地方に住んでいます。
今後の人口増加と世界的経済成長の下で、エネルギーの大幅な需要増加が見込まれ、食品産業を含む全産業が、さらなる省エネルギーの推進と再生可能エネルギーへの転換を迫られています。
日清食品 は、CO2排出量を削減したバイオマスECOカップの採用、即席麺容器や食品残渣を含むごみの再資源化に向けた取り組みを行っています。国分は、主要な大型物流拠点の冷蔵冷凍設備に自然冷媒の導入や人感センサー付きLED照明を採用すること等により、省エネルギー化に取り組んでいます。
・目標8:みんなの生活を良くする安定した経済成長を進め、だれもが人間らしく生産的な仕事ができる社会を作ろう
継続的、包摂的かつ持続可能な経済成長は、グローバルな繁栄の前提条件です。この目標は、すべての人々に生産的な完全雇用とディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の機会を提供しつつ、強制労働や人身取引、児童労働を根絶することをねらいとしています。
日本では、生産年齢人口が減少する中で、全産業・製造業・非製造業のいずれにおいても人手不足感があります。
近年、有期契約労働者やパートタイム労働者、派遣労働者といった非正規雇用労働者は全体として増加傾向にあり、雇用者の約4割を占めています。非正規雇用労働者は、雇用が不安定、賃金が低い、能力開発機会が乏しいなどの課題があります。また、長時間労働の問題への対応、さらに仕事と子育てや介護を無理なく両立させるためにも、多様なニーズに対応した新たな働き方の選択肢を設けることが求められています。
労働力不足の中で、雇用を引き寄せるためには、食品産業においても働き方改革が不可欠です。優れた技術や企画力を有するなど質の高い人材を食品製造業に惹き付けるためには、勤務時間の柔軟化、女性や高齢者に配慮した職場環境の改善を図るほか、ICT化、ロボット化を含めた設備投資を積極的に進めるなど、働く場としての魅力や生産性を高めることが重要となります。
カルビーでは、全従業員がその能力を十分に発揮し活躍できるよう、公正な評価報酬の制度も含めた仕組みづくりを行っています。さらに従業員の約半数を占める女性の活躍推進に注力するとともに、障害者雇用の促進、外国人の活躍推進を進め、グローバル水準でのダイバーシティ経営を目指しています。ニチレイフーズでは、組織間の壁をハミだすことを目指し、さまざまな啓発活動を通じて、個性や能力を存分に発揮できる明るく元気で風通しの良い会社づくりを進めています。カゴメは、生産性の向上による収益構造の改革と働き方の改革を両立させて、多様な人財が働きがいをもって働き続けられる環境づくりを推進しています。
・目標9:災害に強いインフラを整え、新しい技術を開発し、みんなに役立つ安定した産業化を進めよう
この目標は、金融、技術支援、研究とイノベーション、情報通信技術へのアクセス拡大を通じて安定した産業化を図ることを目指しています。
日本のイノベーションの課題としては、自前主義に陥っている研究開発投資、企業における短期主義などがあげられています。これらの課題を解決し、イノベーション創出をしていくためには、オープンイノベーションの推進が重要だとされています。
技術開発により多くの新製品を生み出してきたことが、日本の食品産業の強みのひとつです。超高齢化社会の到来により、機能性、健康、介護などに配慮した製品づくりへのニーズがいっそう高まっています。また、人材確保がますます困難になる中、機械化やIoTを活用した省人化の取組の重要性も増しています。
ロッテは、培ってきた知見や技術を活かし、地域や社会に新たな価値を提供することで、成長し続けてきました。これからも、身体はもちろん、心の健康にも役立つ製品の研究開発や情報発信、啓発活動に注力し、食で健康価値を提供していきます。
・目標10 : 世界中から不平等を減らそう
この目標は、国内および国家間の所得の不平等だけでなく、性別、年齢、障害、人種、階級、民族、宗教、機会に基づく不平等の是正も求めています。
日本では、いじめや虐待等の子供の人権問題に加え、インターネットを悪用した人権侵害、障害等を理由とする偏見や差別、いわゆるヘイトスピーチを含む外国人に対する人権侵害などのさまざまな人権問題も依然として存在しています。
食品産業は女性就業比率、高齢者の就業割合、非正規労働者やパートタイム労働者の就業割合率が高く、多様な人材が差別を受けることなく活躍できる環境づくりが必要です。また、サプライチェーンにおける人権労働問題に注目が集まっており、直接取引のある1次サプライヤーだけではなく、2次、3次サプライヤーの人権・労働問題についても、配慮が必要な状況になっています。
アサヒグループは、世界人権宣言などで定める基本的人権を尊重し、人種、国籍、思想信条、宗教、身体障がい、年齢、性別、配偶者の有無及び性自認・性的指向による差別は一切行わないことを、アサヒグループの指針として明示しています。ハウス食品グループでは、事業を展開するすべての国・地域及びサプライチェーン全体において、雇用や人事に関し、人種、民族、国籍、性別、年齢、信条、宗教、社会的身分、障害等を理由とする違法な差別的取り扱いをせず、多様性を尊重することを目指して、ダイバーシティ経営を推進しています。
・目標11:だれもがずっと安全に暮らせて、災害にも強いまちをつくろう
この目標は、コミュニティの絆と個人の安全を強化しつつ、イノベーションや雇用を刺激する形で、都市その他の人間居住地の再生と計画を図ることを目指したものです。
日本では、高齢化や単身世帯の増加、地元小売業の廃業、既存商店街の衰退等により、過疎地域のみならず都市部においても、高齢者等を中心に食料品の購入や飲食に不便や苦労を感じる、いわゆる買い物難民が増えてきており、食料品アクセス問題として社会的な課題になっています。
街の安全と賑わいが維持されることは、顧客の獲得や労働力の確保などの観点から、事業の継続性に不可欠な要素です。災害の多発が、顧客の生活の安全だけでなく、食品産業の操業や原材料の調達にも大きなリスクとなっていることから、それに備えた事業継続計画の策定、強靱な事業体制を整える必要があります。
日清食品は、防災備蓄食を日常的に消費しながら、使った分だけ定期的に買い足していくことで、一定量の食品を家に備蓄していくローリングストックの認知向上を図り、消費者に実践を促す啓発活動を行っています。
・目標12:生産者も消費者も、地球の環境と人々の健康を守れるよう、責任ある行動をとろう
この目標は、環境に害を及ぼす物質の管理に関する具体的な政策や国際協定などの措置を通じ、持続可能な消費と生産のパターンを推進することを目指しています。
本来食べられるにもかかわらず廃棄されている食品、いわゆる食品ロスの量は2016年度で643万トンでした。3Rの認知度やごみ減量への配慮、グリーン購入に対する意識は減少の一途をたどっています。
食品産業の事業活動により、エネルギーや資源の消費、温室効果ガスの発生、廃棄物の排出など環境に対してさまざまな負の影響が生じています。エネルギー転換や資源の循環利用などを主体的に取り組むことで、SDGsに掲げられた他の目標に寄与するだけでなく、企業にとってもコスト削減や、企業評価の向上につながります。
不二製油では、パームやカカオなどの基幹原料のサステナブル調達を、事業戦略上の重要テーマのひとつとして捉えています。永谷園は、環境負荷低減のために資源の効率的な利用と廃棄物のリサイクルに努めています。特に、まだ食べられるにもかかわらず廃棄される食品ロスの削減を重視し、賞味期限の延長や、需要予測の精度向上による流通在庫減・欠品防止に取り組んでいます。サントリーでは、企業理念に掲げる人と自然と響きあうの実現を目指し、グローバルにサステナビリティ経営を推進し、水のサステナビリティや気候変動対策などに取り組んでいます。
・目標13:気候変動から地球を守るために、今すぐ行動を起こそう
気候変動は開発にとって最大の脅威であり、その広範な未曽有の影響は、最貧層と最も脆弱な立場にある人々に不当に重くのしかかっています。気候変動とその影響に対処するだけでなく、気候関連の危険や自然災害に対応できるレジリエンスを構築するためにも、緊急の対策が必要です。
日本は、世界より速いペースで気温が上昇しており、大雨の頻度の増加や、農作物の品質低下、動植物の分布域の変化、熱中症リスクの増加など気候変動及びその影響が全国各地で現れ、長期にわたり拡大するおそれがあります。
地球温暖化により、食品の原材料となる農林水産物の供給に大きな影響が生じるとともに、災害の多発による操業等への影響が懸念されています。食品産業は、事業活動を通じて温室効果ガスの発生源のひとつとなっています。各業界では、自主的に削減目標を設定し、その実現のための対策を推進することが求められています。
キユーピーでは気候変動の原因となるCO2排出量削減のため、調達、生産、物流、販売の各段階において、省エネルギーやエネルギー転換など積極的に取り組んでいます。昭和産業は、CO2排出量に関する目標を設定し、エネルギーロス、工程不具合削減などの対策のほか、使用エネルギーの見直しに取り組んでいます。
・目標14:海の資源を守り、大切に使おう
この目標は、海洋及び沿岸生態系の保全と持続可能な利用を推進し、海洋汚染を予防するとともに、海洋資源の持続可能な利用によって、領土が狭い低地の島国などの経済的利益を増大させようとするものです。
2018年度の日本周辺水域の資源評価結果によれば、マイワシ太平洋系群やマサバ太平洋系群については引き続き資源量に増加の傾向が見られる一方で、スケトウダラ根室海峡系群やスルメイカ冬季発生系群については資源量に減少の傾向があります。また、海洋ごみが、生態系を含めた海洋環境の悪化や海岸機能の低下、景観への悪影響、船舶航行の障害、漁業や観光への影響など、様々な問題を引き起こしています。さらに近年は、マイクロプラスチックによる海洋生態系への影響が懸念されており世界的な課題となっています。
世界的な水産資源の漁獲量増加や海洋環境の悪化により、需給のひっ迫が懸念される中で、多くの水産資源を利用する日本の食品産業において、その持続性の確保は喫緊の課題です。また、海洋プラスチック問題が国際的にも大きな注目を集めており、様々なプラスチック製品を活用している食品産業も、その対策に取り組んでいく必要があります。
日本水産は、豊かな海を守り持続可能な水産資源の利用と調達を推進するという重要課題に対応し、人権と地球環境に配慮した原材料・製品の調達、養殖や食品加工等の事業活動による海洋環境と水産資源への負荷の低減に取り組んでいます。マルハニチロでは、持続可能な水産資源の調達を推進するとともに、魚に関するさまざまな角度からの情報提供を行っています。
・目標15:陸の豊かさを守り、砂漠化を防いで、多様な生物が生きられるように大切に使おう
この目標は、持続可能な形で森林を管理し、劣化した土地を回復し、砂漠化対策を成功させ、自然の生息地の劣化を食い止め、生物多様性の損失に終止符を打つことに注力するものです。これらの取組をすべて組み合わせれば、森林その他の生態系に直接依存する人々の生計を守り、生物多様性を豊かにし、これら天然資源の恩恵を将来の世代に与えることに役立つと考えられます。
日本では、依然として長期的には生物多様性の状況は悪化している傾向にあります。自然性の高い森林、農地、湿原、干潟といった生態系の規模が著しく縮小し、外来種の影響が増大することに加え、気候変動による生物多様性への影響が、より明確に現れてきています。
豊かな森林は、水源涵養やCO2 の吸収に大きな役割を果たすだけでなく、そこで暮らして農林漁業を営む人々の生活を支えるものであり、食品産業の持続性にとってきわめて重要です。また、多様な生物資源は、将来の資源不足を解決するイノベーションの核となるものでもあります。
キリンは、原材料生産地と事業地域における自然環境を守り、生態系を保全することを掲げ、成果指標として、日本の農地における生物多様性の確保をあげています。明治では、カカオ、パーム油、紙について、調達方針や調達ガイドラインに基づき、人権や環境に配慮した調達活動に取り組んでいます。さらに環境との調和を意識することが大切であると考え、生物多様性の保全活動に力を入れています。
・目標16:平和でだれもが受け入れられ、すべての人が法や制度で守られる社会をつくろう
この目標は人権の尊重、法の支配、あらゆるレベルでの良い統治、および透明かつ効果的で責任ある制度に基づく平和で包括的な社会を目指すものです。
投資家が、企業の持続的成長や中長期的な価値向上を評価する上で、 ESG (環境・社会・ガバナンス)の要素が重要です。企業経営においても、自らの価値観やビジネスモデル、リスク、戦略などをESGの要素を踏まえて統合的に考え、示していくことが求められており、それらを規律づける要としてガバナンスの在り方が問われています。
食品産業にとって、消費者からの信頼を高めていくためにはコンプライアンスの徹底が重要です。ひとたび企業の信頼を揺るがすような事案が生じると、その回復は容易ではありません。また、近年では、サプライチェーンの上流に至るまで、人権や労働環境などの社会問題への配慮が求められています。常に企業を取り巻く社会環境の変化に適切に対応し、法令や社会規範を遵守し、社会倫理に沿った企業活動を進めていくことが不可欠です。
昭和産業は、従業員ひとりひとりがコンプライアンス実践者となり、より堅牢な組織としていくために、コンプライアンス委員会を設置し、推進体制の維持・強化と、啓発活動に努めています。
・目標17:世界のすべての人がみんなで協力しあい、これらの目標を達成しよう
持続可能な開発アジェンダを成功へと導くためには、政府、民間セクター、市民社会の間のパートナーシップが必要です。人間と地球を中心に据えた原則や価値観、共有されているビジョンと目標に根差すこのような包摂的パートナーシップは、グローバル、地域、国内、地方の各レベルで必要とされています。
日本では、企業や自治体、NGOなど国家政府以外の多様な主体が気候変動対策の中で大きな役割を果たすようになってきています。SDGsの実施にあたっては、地方自治体、民間セクター、NGOなどの連携を推進していくことが重要であり、広く全国の地方自治体や地域でSDGsに資する活動を行っているステークホルダーによる積極的な取組が期待されます。
食品産業の多くが地域性の高い中小企業であり、地域社会に支えられて経営が成立しています。地方自治体や他企業、市民団体等と連携して行動することで、一社ではできない社会への貢献や地域での信頼獲得につながります。また、取組を通じて新しい取引先や事業パートナーの獲得、新たな事業の創出なども期待されます。
雪印メグミルクは、地方自治体と協定を結び、酪農振興に貢献するとともに、食を中心とするさまざまな分野で地域に貢献しています。さらに各地域の農協や指導機関と連携し、自給飼料の増産のための実証研究等を通じて持続可能な酪農生産をサポートしています。 エスビー食品では、お客様視点に立った製品づくりを行うために、社内外におけるモニター調査の活用、お客様相談センターとの連携、取引先からの原材料の情報収集を行っています。さらに、機能性などの新たな価値創出のため、大学などとの共同研究を実施しています。
まとめ
SDGsは、2015年9月の国連サミットで150を超える加盟国首脳の参加のもと、全会一致で採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた、「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」のことです。
SDGsは、先進国や発展途上国すべての国を対象に、経済、社会、環境の3つの側面のバランスがとれた社会を目指す世界共通の目標として、17のゴールとその課題ごとに設定された169のターゲット(達成基準)から構成されます。
これらは、貧困や飢餓から環境問題、経済成長やジェンダーに至る広範な課題を網羅しており、豊かさを追求しながら地球環境を守り、そして、誰一人取り残さないことを強調し、人々が人間らしく暮らしていくための社会的基盤を2030年までに達成することが目標とされています。
SDGsの目標達成には、公的機関だけではなく、民間企業や市民の参加が不可欠です。特に企業に対しては、ビジネス活動の一環として行う投資やイノベーションを通じて、社会課題を解決することが期待されています。食品産業でも既に実践的にSDGsに取り組んでいます。