速やかな生育、高いたんぱく質含量、リーズナブルな有機基質に対する資化能という理由から、微生物は潜在的に貴重なたんぱく源あるいは動物飼料源となります。目的が酵母細胞を得ることにある以上、生育収量を最大にするために微生物は必ず強制通気下で培養されます。Candida属の偏性好気性酵母が、発酵性酵母より優れたものとして、用いられます。
微生物は、より容易に利用しうるほかの有機化合物を急速かつ効率的にたんぱく質に変換するための最良の道具となっています。この点は、家畜と酵母によるたんぱく質生産を比較すれば明らかです。体重500Kgの雄牛は24時間におおよそ0.4Kgのたんぱく質を生産します。一方、好適な培養条件下で500Kgの酵母は、同じ時間内に50,000Kg以上のたんぱく質を生産します。
多くの植物性食品は、量から見れば哺乳動物の必要量を供給するために十分なたんぱく質を含んでいますが、そのたんぱく質は哺乳動物が必要とするアミノ酸を欠いているので、唯一のたんぱく質源とするには不適となります。小麦たんぱく質ではアミノ酸のリシン、米たんぱく質ではリシンとトレオニン、トウモロコシたんぱく質ではトリプトファンとリシン、マメ科植物のたんぱく質ではメチオニンの含量がそれぞれ低くなっています。単一の植物たんぱく質源に欠乏アミノ酸を添加すると、その食餌が適正化されます。
ワインやビールを空気にさらしたままにしておくと酸敗します。酸敗はアルコールが酢酸に酸化されることに起因し、偏性好気性酢酸菌によって触媒されます。ワインの自然酸敗は食酢製造の伝統的な製法ですまた、よりリーズナブルな蒸留アルコールなどの原材料から、より迅速な方法で食酢がつくられます。10%のアルコールを含む溶液は、酢酸菌により4~5日で酢酸に転換されます。多くの食酢が今なおこの方法でつくられています。
たんぱく質源としての微生物
速やかな生育、高いたんぱく質含量、リーズナブルな有機基質に対する資化能という理由から、微生物は潜在的に貴重なたんぱく源あるいは動物飼料源となります。動物栄養に関する科学の発達は、動物飼料を補うものとして利用するための酵母の培養を基盤とする新しい工業の発展をもたらしました。
目的が酵母細胞を得ることにある以上、生育収量を最大にするために微生物は必ず強制通気下で培養されます。しかし、酸素供給が高レベルに維持されるとしても、糖質が基質として用いられる場合には、基質の一部がアルコールに転換される危険がつきまといます。したがって、Candida属の偏性好気性酵母が、発酵性酵母より優れたものとして、用いられます。
原材料の価格は、食料用の微生物の生産に最も重要な因子であり、初期には廉価な糖蜜、パルプ廃液が食用酵母の培養に用いられました。しかし、食用酵母の生産には常に好気的培養条件が用いられるので、呼吸代謝の基質となる化合物はすべて生育用基質として役立つ可能性があります。このことから、基質として石油を利用する製法が開発されるに至りました。ほかの基質に比べて、石油は今なお安価であり、有機化合物は高度に還元されているので、石油での生育収量は極度に高くなります。
食べ物または飼料を補うものとして微生物のもつ大きな潜在的価値は、その高いたんぱく質含量にあります。このために微生物は、より容易に利用しうるほかの有機化合物を急速かつ効率的にたんぱく質に変換するための最良の道具となっています。この点は、家畜と酵母によるたんぱく質生産を比較すれば明らかです。体重500Kgの雄牛は24時間におおよそ0.4Kgのたんぱく質を生産します。一方、好適な培養条件下で500Kgの酵母は、同じ時間内に50,000Kg以上のたんぱく質を生産します。
多くの植物性食品は、量から見れば哺乳動物の必要量を供給するために十分なたんぱく質を含んでいますが、そのたんぱく質は哺乳動物が必要とするアミノ酸を欠いているので、唯一のたんぱく質源とするには不適となります。小麦たんぱく質ではアミノ酸のリシン、米たんぱく質ではリシンとトレオニン、トウモロコシたんぱく質ではトリプトファンとリシン、マメ科植物のたんぱく質ではメチオニンの含量がそれぞれ低くなっています。単一の植物たんぱく質源に欠乏アミノ酸を添加すると、その食餌が適正化されます。植物たんぱく質を個々のアミノ酸で強化した食餌の実用性は、動物や人を用いた多数の実験で詳細に証明されています。このように特定のアミノ酸、特にリシン、トレオニン、メチオニンの世界的な不足は全たんぱく質の不足よりもさらに深刻です。そのため、特定のアミノ酸の微生物による生産について、集中的な研究が行われています。
微生物の代謝は正確に制御されています。したがって、微生物は普通その生育上の必要量に丁度見合うだけの量のアミノ酸を合成します。しかし、ある微生物の野生株及び変異株では特定の生合成経路の制御機構に欠損が生じ、その結果特定のアミノ酸が培地中に大量に排出されます。現在、栄養的に重要なアミノ酸の微生物生産法が確立されており、また絶えず改良されています。
酢酸菌の利用
ワインやビールを空気にさらしたままにしておくと酸敗します。酸敗はアルコールが酢酸に酸化されることに起因し、偏性好気性酢酸菌によって触媒されます。ワインの自然酸敗は食酢製造の伝統的な製法です。食酢(vinegar)という言葉は、すっぱいワインを意味するフランス語のvinaigreに由来します。
酢の製造は今なお経験的な部分が大半を占めています。過去100年間に導入された主な改良法は、微生物の側面というよりもむしろ機械化に関するものです。現在でもフランスで用いられているオルレアン法では、木製の大槽の一部分をワインで満たし、酢酸菌を液体表面に生育させます。エタノールから酢酸への転換は数週間かかり、その過程は液体への空気の拡散が遅いことが律速因子となっています。この時間のかかる非効率的な方法が生き長らえているのは、製品の高い品質によるものです。
また、よりリーズナブルな蒸留アルコールなどの原材料から、より迅速な方法で食酢がつくられます。10%のアルコールを含む溶液は、酢酸菌により4~5日で酢酸に転換されます。多くの食酢が今なおこの方法でつくられています。
エタノールから酢酸への酸化は、酢酸菌によって行われる不完全酸化の一例です。薬品産業に用いられているグルコン酸は酢酸菌によるぶどう糖の酸化によってつくられます。このような反応が産業で用いられる例として、ソルビトールからのソルボースの生産があります。ソルボースはある種の薬品の懸濁剤として用いられるほか、アスコルビン酸(ビタミンC)の製造における中間体となります。
まとめ
速やかな生育、高いたんぱく質含量、リーズナブルな有機基質に対する資化能という理由から、微生物は潜在的に貴重なたんぱく源あるいは動物飼料源となります。目的が酵母細胞を得ることにある以上、生育収量を最大にするために微生物は必ず強制通気下で培養されます。Candida属の偏性好気性酵母が、発酵性酵母より優れたものとして、用いられます。
微生物は、より容易に利用しうるほかの有機化合物を急速かつ効率的にたんぱく質に変換するための最良の道具となっています。この点は、家畜と酵母によるたんぱく質生産を比較すれば明らかです。体重500Kgの雄牛は24時間におおよそ0.4Kgのたんぱく質を生産します。一方、好適な培養条件下で500Kgの酵母は、同じ時間内に50,000Kg以上のたんぱく質を生産します。
多くの植物性食品は、量から見れば哺乳動物の必要量を供給するために十分なたんぱく質を含んでいますが、そのたんぱく質は哺乳動物が必要とするアミノ酸を欠いているので、唯一のたんぱく質源とするには不適となります。小麦たんぱく質ではアミノ酸のリシン、米たんぱく質ではリシンとトレオニン、トウモロコシたんぱく質ではトリプトファンとリシン、マメ科植物のたんぱく質ではメチオニンの含量がそれぞれ低くなっています。単一の植物たんぱく質源に欠乏アミノ酸を添加すると、その食餌が適正化されます。
ワインやビールを空気にさらしたままにしておくと酸敗します。酸敗はアルコールが酢酸に酸化されることに起因し、偏性好気性酢酸菌によって触媒されます。ワインの自然酸敗は食酢製造の伝統的な製法ですまた、よりリーズナブルな蒸留アルコールなどの原材料から、より迅速な方法で食酢がつくられます。10%のアルコールを含む溶液は、酢酸菌により4~5日で酢酸に転換されます。多くの食酢が今なおこの方法でつくられています。