「古事記」は、日本に現存する最古の書物です。世界のはじまりから神々の出現、そして天皇家の皇位継承の様子が描かれています。
古事記に記された「食」に関わる神が、トヨウケという女神です。古事記によると、国土や自然に関わる神々を生みだしたイザナミは、最後に火の神を産みます。その出産で大やけどを負って苦しんでいるときに、排泄物からワクムスヒという神が生まれました。ムスヒとは生み出す力を意味します。そのワクムスヒの子がトヨウケです。トヨは豊かであること、ウケは食物を意味します。アマテラスの孫のホノニニギとともに地上に下り、伊勢神宮の外宮に祀られたとあります。
穀物の起源神話は、穀物のはじまりとともに、おもてなしの概念が当時からあったことを示唆しています。日頃何気なく口にしている食べ物の起源は、古事記に神話として描かれています。天上界の神々がオオゲツヒメという女神に食べ物を所望したとき、その女神は自分の鼻と口と尻から、さまざまな美味なものを取り出し、それを調理し盛りつけて神々に差し上げました。その様子を見ていたスサノオは、汚い方法で料理を出す女神だと思ってその女神を殺し、殺された女神の目から稲、耳から粟、鼻から小豆、尻から大豆が生じました。これが地上界に穀物がもたらされた起源と考えられています。
日本に現存する最古の書物「古事記」
「古事記」は、日本に現存する最古の書物です。序文と上中下の3巻からなり、世界のはじまりから神々の出現、そして天皇家の皇位継承の様子が描かれています。序文には、古事記の成立過程が記されています。古事記は、まず天武天皇によって作成がはじまり、おおよそ30年後の元明天皇在世中の712年に、太安万侶によって完成したといわれています。古事記は、日本の古語を書き記すために、崩れた漢文体を用い、国内向けの文章で書かれています。内容は、神々の世界から各天皇の時代の出来事について、登場する神々や人々が個性豊かに描かれ、それぞれの物語がドラマチックに描かれています。完成後に広く読まれた形跡がなく、宮中内部の私的な文書とも言われ、一方では天皇家と各氏族との関係性を明示し、天皇中心の国家体制を確立するために作られたという見方もあります。
「日本書紀」は、中国の歴史書に倣って、日本でも本格的な歴史書を作ろうという動きの中で作られました。そのため、中国でも読めるものを意図しており、漢文体で、時系列順に記録されています。国の正史と位置づけられる日本書紀と比較すると、古事記は成立の意図や性格など謎に包まれた部分が多くあり、それが逆に魅力となって読み継がれています。
伊勢神宮に祀られる食の神「トヨウケ」
日本最古の書物である古事記には、今日でも解明されることのない不思議がたくさん潜んでいます。
古事記に記された「食」に関わる神が、トヨウケという女神です。食べることは、人が生きていく上でもっとも重要なことのひとつです。古事記によると、国土や自然に関わる神々を生みだしたイザナミは、最後に火の神を産みます。その出産で大やけどを負って苦しんでいるときに、排泄物からワクムスヒという神が生まれました。ムスヒとは生み出す力を意味します。そのワクムスヒの子がトヨウケです。トヨは豊かであること、ウケは食物を意味します。アマテラスの孫のホノニニギとともに地上に下り、伊勢神宮の外宮に祀られたとあります。古事記がトヨウケについて語っているのは、これだけです。
後世の資料によると、伊勢神宮に祀られているアマテラスが、一人で食事を十分にとることができないので、食事の神であるトヨウケが必要だと伝えます。そこで、それまで丹波国にいたトヨウケを伊勢の外宮にお祀りするようになったといわれています。
伊勢神宮では、今も日別朝夕大御饌祭という儀式が行われています。この儀式は、アマテラスをはじめとする神々に朝と夕の食事をお供えするもので、その神饌はトヨウケの祀られる外宮で用意されています。
トヨウケの親であるワクムスヒは、火の神の誕生がきっかけで生まれました。ワクムスヒと同じときにミツハノメという水の神も生まれています。火と水の神、そして生み出す力の神が登場した後に生まれていることから、トヨウケは食物のなかでもとくに米をはじめとする穀物と関わりが深い神だと考えられています。伊勢神宮で神々に供えられる食事もお米が中心です。
古事記に記された食べ物の始まり
穀物の起源神話は、穀物のはじまりとともに、おもてなしの概念が当時からあったことを示唆しています。日頃何気なく口にしている食べ物の起源は、古事記に神話として描かれています。天上界の神々が「オオゲツヒメ」という女神に食べ物を所望したとき、その女神は自分の鼻と口と尻から、さまざまな美味なものを取り出し、それを調理し盛りつけて神々に差し上げました。その様子を見ていたスサノオは、汚い方法で料理を出す女神だと思ってその女神を殺してしまいます。その殺された女神の目から稲、耳から粟、鼻から小豆、尻から大豆が生じました。その時、女神の身体に生じた種を天上界の神であるカミムスヒが、スサノオに取らせたという話です。これが地上界に穀物がもたらされた起源と考えられています。
この話は、スサノオが乱暴を働いたことにより追放され、出雲に降りてヤマタノオロチを退治する話の直前の場面に挟み込まれるようにして記されています。スサノオの乱暴な姿を示しつつも、穀物起源神話はその暴力性が影響した話として位置付けられ、次のヤマタノオロチ退治神話に繋がります。
日本書紀でも同様の神話があります。こちらは月の神ツクヨミがウケモチという女神を殺すことで、穀物を生み出されたことを描いています。ツクヨミはアマテラスに命じられてウケモチのところに派遣されており、アマテラスはツクヨミがこの女神殺したことに激怒し、ツクヨミとはもう同じ天空には居たくないことから、これが太陽と月が交互に出現することの起源であると説いています。穀物起源の神話に日月の分離の起源も重ねられています。
まとめ
「古事記」は、日本に現存する最古の書物です。序文と上中下の3巻からなり、世界のはじまりから神々の出現、そして天皇家の皇位継承の様子が描かれています。序文には、古事記の成立過程が記されています。古事記は、まず天武天皇によって作成がはじまり、おおよそ30年後の元明天皇在世中の712年に、太安万侶によって完成したといわれています。古事記は、日本の古語を書き記すために、崩れた漢文体を用い、国内向けの文章で書かれています。内容は、神々の世界から各天皇の時代の出来事について、登場する神々や人々が個性豊かに描かれ、それぞれの物語がドラマチックに描かれています。
古事記に記された「食」に関わる神が、トヨウケという女神です。古事記によると、国土や自然に関わる神々を生みだしたイザナミは、最後に火の神を産みます。その出産で大やけどを負って苦しんでいるときに、排泄物からワクムスヒという神が生まれました。ムスヒとは生み出す力を意味します。そのワクムスヒの子がトヨウケです。トヨは豊かであること、ウケは食物を意味します。アマテラスの孫のホノニニギとともに地上に下り、伊勢神宮の外宮に祀られたとあります。
伊勢神宮では、今も日別朝夕大御饌祭という儀式が行われています。この儀式は、アマテラスをはじめとする神々に朝と夕の食事をお供えするもので、その神饌はトヨウケの祀られる外宮で用意されています。
穀物の起源神話は、穀物のはじまりとともに、おもてなしの概念が当時からあったことを示唆しています。日頃何気なく口にしている食べ物の起源は、古事記に神話として描かれています。天上界の神々がオオゲツヒメという女神に食べ物を所望したとき、その女神は自分の鼻と口と尻から、さまざまな美味なものを取り出し、それを調理し盛りつけて神々に差し上げました。その様子を見ていたスサノオは、汚い方法で料理を出す女神だと思ってその女神を殺してしまいます。その殺された女神の目から稲、耳から粟、鼻から小豆、尻から大豆が生じました。その時、女神の身体に生じた種を天上界の神であるカミムスヒが、スサノオに取らせたという話です。これが地上界に穀物がもたらされた起源と考えられています。