【美しいものには毒がある】誤食に注意すべき有毒植物

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 有毒植物は、その植物の全体あるいは一部に毒を有し、人をはじめ動物などが食べたり、触れたりすると炎症や痙攣などの症状を引き起こします。毒性が強い有毒植物に至っては、死を招く場合があります。

 日本に広く分布する身近な有毒植物としては、ドクセリやトリカブト、ドクウツギ、イチイ、イヌサフラン、クワズイモ、シキミ、スイセン、スズラン、ヒガンバナなどがあります。誤って摂取すると痙攣、腹痛、下痢、嘔吐、めまい、呼吸困難、麻痺などを引き起こし、最悪の場合は死に至ります。

 一方、これらの有毒植物の一部は、何らかの手を加えることで、薬として利用されることもあります。

有毒植物

 有毒植物は、その植物の全体あるいは一部に毒を有し、人をはじめ動物などが食べたり、触れたりすると炎症や痙攣などの症状を引き起こします。毒性が強い有毒植物に至っては、死を招く場合があります。

 一方、毒のある植物でも加工などの処理さえすれば、食用となります。身近なものではイチョウやワラビ、ジャガイモなどの植物に毒性がありますが、処理されて食されています。植物の中でも食材とならず、毒性の強い危険な植物が有毒植物と言われています。

 毒のある植物は、蚊取り線香や狩猟用の道具などに使用されています。動物の種類によっても害の有無は変化します。普段口にしているネギやタマネギは、犬や猫にとっては有害となり、逆に動物が口にしているものも、人には有害という場合があります。

日本における有毒植物

 日本に広く分布する身近な有毒植物です。

・ドクセリ

 ドクセリは大型の植物で、高さは80~100cmほどになります。葉は長楕円形状の被針型で、長さ3~8cm、幅0.5~2cm、果実は長さ約2.5㎜ほどになります。日本では九州~北海道にかけて広く分布しています。

 葉の形状が食用のセリと酷似し、生育環境も似ていることから、若葉を誤って食べてしまい、中毒となることが後を絶ちません。地下茎をワラビと間違えて食べ、亡くなった死亡例もあります。ドクセリの主な毒の成分はシクトキシンと言われ、皮膚から吸収されやすい性質があります。症状としては、痙攣、腹痛、嘔吐、めまい、呼吸困難、下痢などで最悪の場合は死に至ります。摂取量と症状との関連については、5 g 以上なら重症化する可能性があり、1 g 以下なら問題ないとされています。

・トリカブト

 トリカブトは、本州中部以北に広く分布し、全長おおよそ100cmです。名前は形状が兜似ていることに由来します。

 トリカブトの毒性は非常に強く、特に根に多くの毒が存在しています。時期や地域によって毒性の強さは変化しますが、強さに関係なく摂食は極めて危険です。毒はアコニチンと呼ばれ、口にすると呼吸困難や嘔吐、臓器不全を引き起こし、最悪の場合死に至ります。即効性があり、口にして数十秒で死に至ることもあります。投与した動物の半数が死亡する用量を示す半数致死量(LD50)は0.2~1.0gです。ヨモギにも似ていることから誤って口にして、中毒になった事例もあります。

・ドクウツギ

 ドクウツギは、北海道から本州にかけての山地や河川敷などに広く分布しています。高さはおおよそ100~200cmです。実は1cmほどで熟してくると黒紫色になります。

 ドクウツギが持つ主な毒は、コリアミルチンとツチンという成分で、摂取すると呼吸困難や痙攣を引き起こし、最悪の場合死に至ります。葉や茎、実などに毒が存在し、実を食べて死亡した例もあります。黒紫色に熟したドクウツギは、毒が抜けていると言われることがありますが、食べないに越したことはありません。

・イチイ

 イチイは寒さに強く、主に北海道や東北地方に分布します。高さ20mほどの高い木に実をつけます。完熟したイチイの実は、食べると甘いですが、果実以外は全ての部位に毒を持っています。特に種子は猛毒となり、3~4粒食べると死に至ります。

 イチイの毒の成分はタキソール及びタキシンと呼ばれ、主な中毒症状は、めまい、腹痛、嘔吐、痙攣、呼吸困難、筋力低下などです。特に種子を食べた場合、死に至ります。

・イヌサフラン

 イヌサフランは、一般的にはコルチカムという名前でも知られ、園芸用として売られています。見た目がギョウジャニンニクなどに似ていることから、間違って食べてしまい、中毒症状や死亡してしまう事例が見受けられます。

 イヌサフランに含まれる毒の成分コルヒチンを摂取すると、下痢、嘔吐、中枢性の知覚麻痺、末梢性血管麻痺、呼吸困難になり、最悪の場合死に至ります。

・クワズイモ

 クワズイモは、里芋と間違って食べる事例が多く、毎年1~2件報告されています。大きさは、葉がおおよそ60cmにもなり、葉柄はおおよそ60~100cmになる植物です。沖縄ではさまざまなところで自生しています。

 クワズイモの毒の成分は、シュウ酸カルシウムです。摂取すると嘔吐、下痢、皮膚炎、麻痺などを引き起こします。シュウ酸カルシウムの結晶構造は、針のような形状をしていることから、口に入れると痛みを伴い、その結果クワズイモによる中毒を回避することができます。皮膚にシュウ酸カルシウムが付着した場合、皮膚が炎症を起こす恐れがあります。

・シキミ

 シキミはお墓や仏壇の前に備えられる花で、毒性の強い種子や果実を間違って口に入れ、中毒症状を引き起こします。一番多い事例は、中華料理などでよく使われるトウシキミと呼間違えてしまうことです。トウシキミの実を乾燥させたものは、八角やスターアニスと呼ばれ、中華料理には欠かせません。香りも似通っており、食べると最悪の場合死に至るほど危険な植物です。

 シキミの毒の成分はアニサチンと呼ばれ、摂取するとわずか数時間で意識障害を伴った痙攣、嘔吐、下痢などの消化器系の不全といった症状が現れます。特に実や種子の毒性が強いことから、最悪の場合死に至ることもあります。

・スイセン

 スイセンは伸びた葉がニラなどに酷似していることから、間違って食べてしまうことが多い植物です。身近にある植物で誤って食べてしまうことが非常に多く、過去には死亡した事例もあります。クワズイモと同じくシュウ酸カルシウムが含まれているので、口にした瞬間に痛みを伴うことから、重篤化を回避することができます。

 スイセンの毒の成分は、リコリンやガランタミンなどのアルカロイドとシュウ酸カルシウムです。摂取すると強い吐き気に襲われ、口に痛みが生じることで、あまり重篤化することはありません。

・スズラン

 スズランは観賞用として人気がある反面、人を死に至らしめる大変危険な植物です。スズランと非常に似ているギョウジャニンニクと間違って食べる事例が、多く報告されています。

 スズランにはコンバラトキシンやコンバロシドなどの有毒物質が含まれています。特に根や花に高い含有量を示し、摂取すると嘔吐、頭痛、めまい、血圧低下、心臓麻痺などを引き起こします。ほとんどの症状は1時間以内に発症し、最悪の場合死に至ることもあります。致死量は、青酸カリの約15倍の強さです。

・ヒガンバナ

 ヒガンバナは曼珠沙華(マンジュシャゲ)とも呼ばれ、道端や田んぼのあぜなどに群生し、秋の彼岸のころに強く反り返った鮮やかな赤い花を咲かせます。球根に強い毒性があり、かつては救荒作物として球根のでんぷんを毒抜きして食べていました。

 ヒガンバナは、花全体にリコリンやガラタミンなど約20種の有毒成分をもっています。毒は特に球根に多く含まれ、毒抜きせずに食べると30分以内に激しい下痢、嘔吐に見舞われ、重篤化すると呼吸不全、痙攣、中枢神経麻痺といった深刻な症状を引き起こします。

 誤って食べた場合、解毒剤はなく、催吐薬や下剤を投与しての対症療法を行う必要があります。球根1gあたりに約0.15mgのリコリンを含んでいるとされ、リコリンの致死量は10gであることから、球根を1個食べても重篤な症状に至ることはあまりありません。

 一方、精製されたヒガンバナの球根は、消炎作用や利尿作用のある漢方薬として利用されることがあります。また、最近ではヒガンバナに含まれるガランタミンが記憶機能を回復させるとして、アルツハイマー型認知症の薬に利用されるようになりました。

まとめ

 有毒植物は、その植物の全体あるいは一部に毒を有し、人をはじめ動物などが食べたり、触れたりすると炎症や痙攣などの症状を引き起こします。毒性が強い有毒植物に至っては、死を招く場合があります。

 日本に広く分布する身近な有毒植物としては、ドクセリやトリカブト、ドクウツギ、イチイ、イヌサフラン、クワズイモ、シキミ、スイセン、スズラン、ヒガンバナなどがあります。誤って摂取すると痙攣、腹痛、下痢、嘔吐、めまい、呼吸困難、麻痺などを引き起こし、最悪の場合は死に至ります。

 一方、これらの有毒植物の一部は、何らかの手を加えることで、薬として利用されることもあります。

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