トリカルボン酸サイクル(TCAサイクル・クエン酸回路)は、アセチルCoA(アセチルコエンザイムエー)のアセチル基を二酸化炭素と水に完全酸化する経路です。アセチル基の炭素は、糖からの解糖系でピルビン酸、脂肪酸、ある種のアミノ酸に由来します。したがって、アセチルCoAは、これらを完全酸化する際の共通の中間体となり、この過程は好気的です。トリカルボン酸サイクルとこれに伴う呼吸系で、有機物中の炭素は完全に二酸化炭素に酸化され、エネルギーを供給します。
トリカルボン酸サイクルを触媒する酵素は、解糖系と異なり真核細胞ではミトコンドリアにあります。そこで、トリカルボン酸サイクル中間体の酸化で基質を離れた電子対は、直ちにミトコンドリアの電子伝達系に入り、酸素の還元に使用されます。電子対が酸素に移るとき、ADP(アデノシン2リン酸)がリン酸化され、ATP(アデノシン3リン酸)ができます。
細胞質で生成したピルビン酸は、ミトコンドリアでアセチルCoAに酸化されます。アセチルCoAは、糖質、脂質、ある種のアミノ酸に共通な代謝中間体です。アセチルCoAが、トリカルボン酸サイクルに入り、8つの酵素で二酸化炭素と水に完全酸化されます。
アセチルCoAが、トリカルボン酸サイクルで二酸化炭素と水に完全酸化されるときに12個ATP(アデノシン3リン酸)を生じます。ピルビン酸の酸化であれば15個のATPを生じます。
トリカルボン酸サイクルとぶどう糖酸化のエネルギー
トリカルボン酸サイクル(TCAサイクル・クエン酸回路)は、アセチルCoA(アセチルコエンザイムエー)のアセチル基を二酸化炭素と水に完全酸化する経路です。アセチル基の炭素は、糖からの解糖系でピルビン酸、脂肪酸、ある種のアミノ酸に由来します。したがって、アセチルCoAは、これらを完全酸化する際の共通の中間体となり、この過程は好気的です。植物の光合成で生じた酸素が大気中にある程度蓄積して、はじめてこの過程が始まりました。トリカルボン酸サイクルとこれに伴う呼吸系で、有機物中の炭素は完全に二酸化炭素に酸化され、エネルギーを供給します。
トリカルボン酸サイクルを触媒する酵素は、解糖系と異なり真核細胞ではミトコンドリアにあります。そこで、トリカルボン酸サイクル中間体の酸化で基質を離れた電子対は、直ちにミトコンドリアの電子伝達系に入り、酸素の還元に使用されます。電子対が酸素に移るとき、ADP(アデノシン2リン酸)がリン酸化され、ATP(アデノシン3リン酸)ができます。
ぶどう糖の分解は、嫌気的な解糖系と好気的なトリカルボン酸サイクルにわけて、エネルギー(ATP)の生産効率を比較すると、ぶどう糖が二酸化炭素と水に完全酸化されるときの自由エネルギー変化は、−686kcalです。ぶどう糖が、乳酸になるときの自由エネルギー変化は、おおよそ−47kcalです。つまり、ぶどう糖分子のエネルギーは、乳酸までではほんの7%しか取り出されず、残りの639kcalは生じた乳酸が完全酸化されるときに取り出されます。
生体がぶどう糖を好気的に酸化し、二酸化炭素と水にするとき、乳酸は途中で生成しなくても問題なく、糖代謝のカギはピルビン酸で、これが還元されて乳酸になり、完全酸化されれば二酸化炭素と水になります。
ピルビン酸の酸化
細胞質で生成したピルビン酸は、ミトコンドリアでアセチルCoAに酸化されます。この反応は、酵素のピルベートデヒドロゲナーゼが触媒し、2種類の補酵素(CoAとNADH)、マグネシウムなどが関与します。NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド )は、全ての真核生物と多くの古細菌、真正細菌で用いられる電子伝達体です。さまざまな脱水素酵素の補酵素として機能し、酸化型 (NAD+) および還元型 (NADH) の2つの状態を取ります。
この反応の自由エネルギー変化は、ΔG=−8kcalと大きく、しかも高エネルギーのチオエステルであるアセチルCoAを生成します。
トリカルボン酸サイクルに関与する酵素と生成物
アセチルCoAは、糖質、脂質、ある種のアミノ酸に共通な代謝中間体です。アセチルCoAが、トリカルボン酸サイクルに入り、8つの酵素で二酸化炭素と水に完全酸化されます。
シトレートシンターゼという酵素は、ミトコンドリア内部に存在し、アセチルCoAがトリカルボン酸サイクルに入る反応を触媒します。アセチルCoAとオキサロ酢酸から、クエン酸が生成します。
アコニテートヒドラターゼという酵素は、クエン酸をイソクエン酸にする反応を触媒し、イソシトレートデヒドロゲナーゼという酵素は、イソクエン酸を2オキソグルタル酸と二酸化炭素に変えます。2オキソグルタレートデヒドロゲナーゼという酵素は、2オキソグルタル酸をスクシニルCoAにし、スクシニルCoAシンテターゼという酵素は、前の反応で生じた高エネルギーチオエステルから高エネルギーリン酸化合物とコハク酸をつくります。
スクシネートデヒドロゲナーゼという酵素の作用で、コハク酸はフマル酸になり、フマレートヒドラターゼという酵素で、フマル酸はリンゴ酸になります。リンゴ酸は、マレートデヒドロゲナーゼという酵素で、オキサロ酢酸となり、オキサロ酢酸が再生されることでトリカルボン酸サイクルが完結します。
トリカルボン酸サイクルにおいて、ビタミンB群、すなわちビタミンB1、ビタミンB2、ニコチン酸、パントテン酸、リポ酸、ビオチンなどがこれらの酵素の働きに関与しています。
補充反応
トリカルボン酸サイクルの中間体が、合成などに使用されれば、その分を補充しなければなりません。
動物組織で重要な補充反応は、ミトコンドリアのピルベートカルボキシラーゼという酵素によるピルビン酸と二酸化炭素、ATP、水からオキサロ酢酸を生成する反応です。この反応にはマグネシウム、アセチルCoA、ビオチンも関与しています。この酵素は動物には存在しますが、植物にはありません。この酵素で解糖系の生成物がトリカルボン酸サイクルの中間体となります。
ホスホエノールピルベートカルボシキラーゼという酵素は、二酸化炭素とホスホエノールピルビン酸、水からオキサロ酢酸を生成します。この酵素は、高等植物、酵母、細菌には総存在しますが、動物にはありません。この酵素もトリカルボン酸サイクルに必要なオキサロ酢酸の補充に働きます。
ATP(アデノシン3リン酸)の生産
ピルビン酸やアセチルCoAの酸化で、基質を離れた電子はミトコンドリア内膜で電子伝達系に入り、ここで電子伝達に伴う酸化的リン酸化が起こります。
アセチルCoAが、トリカルボン酸サイクルで二酸化炭素と水に完全酸化されるときに12個ATP(アデノシン3リン酸)を生じます。ピルビン酸の酸化であれば15個のATPを生じます。ATPは7.3kcal/molにあたるため、ピルビン酸の酸化でATPに蓄えられるエネルギーは、109.5kcal/molに達します。
まとめ
トリカルボン酸サイクル(TCAサイクル・クエン酸回路)は、アセチルCoA(アセチルコエンザイムエー)のアセチル基を二酸化炭素と水に完全酸化する経路です。アセチル基の炭素は、糖からの解糖系でピルビン酸、脂肪酸、ある種のアミノ酸に由来します。したがって、アセチルCoAは、これらを完全酸化する際の共通の中間体となり、この過程は好気的です。トリカルボン酸サイクルとこれに伴う呼吸系で、有機物中の炭素は完全に二酸化炭素に酸化され、エネルギーを供給します。
トリカルボン酸サイクルを触媒する酵素は、解糖系と異なり真核細胞ではミトコンドリアにあります。そこで、トリカルボン酸サイクル中間体の酸化で基質を離れた電子対は、直ちにミトコンドリアの電子伝達系に入り、酸素の還元に使用されます。電子対が酸素に移るとき、ADP(アデノシン2リン酸)がリン酸化され、ATP(アデノシン3リン酸)ができます。
細胞質で生成したピルビン酸は、ミトコンドリアでアセチルCoAに酸化されます。アセチルCoAは、糖質、脂質、ある種のアミノ酸に共通な代謝中間体です。アセチルCoAが、トリカルボン酸サイクルに入り、8つの酵素で二酸化炭素と水に完全酸化されます。
アセチルCoAが、トリカルボン酸サイクルで二酸化炭素と水に完全酸化されるときに12個ATP(アデノシン3リン酸)を生じます。ピルビン酸の酸化であれば15個のATPを生じます。